セドリック – Y30V6が主役になった6代目

1983年6月22日、6代目セドリックのY30が登場しました。四角い430型の次も直線を使った姿ですが、ボンネットの中は大きく変わります。長く親しんだ直列6気筒に代わり、VG型のV6を主力に据えたのです。
しかもY30は、エンジンだけを替えた車ではありません。静かな室内、雨を見て動くワイパー、後席まで調整できる電動シート。上級車の快適さを、機械と電子装備の両方でつくろうとした世代です。
直列6気筒からV6へ
先代430型の2.0Lターボは、L型の直列6気筒でした。6つのシリンダーが一列に並ぶ、長く使ってきた形です。Y30で前面に出たVG型は、それを左右3本ずつに分けたV6。日産はY30を、国産乗用車で初めてV6を採用したモデルと紹介しています。
登場時のV6には3.0LのVG30Eと2.0LのVG20Eがありました。日産のY30セダン資料には、2.0LターボのVG20ETもラインアップとして挙げられています。3.0Lだけの車ではなく、排気量と過給の選び方を残しながら、エンジンの基本の形を変えたのです。

写真のセダンでは、広いグリルの両端にライトを置き、車体側面をまっすぐ伸ばしています。430型からの角張った輪郭を残しつつ、中身は新しいV6へ。外観の継続とエンジンの転換が、同じ車に収まっています。
静かさを数字の外でもつくる
Y30のホイールベースは先代より40mm長くなりました。長さだけで室内の良し悪しは決まりませんが、日産はエンジン音を抑える工夫や、サスペンションから伝わる振動を減らす構造も説明しています。
さらに車体表面の段差を抑え、走行中の空気の流れにも気を配りました。上級車を「大きなエンジンと豪華な内装」で終わらせず、乗っている間に聞こえる音や伝わる揺れまで整える。Y30が目指した快適さは、こうした見えにくい部分にもありました。
それは運転する人だけの話ではありません。後席に人を乗せるセドリックでは、エンジンの静かさも、車体から伝わる振動の少なさも、移動中の居心地を左右します。Y30はV6の新しさを、車内で感じる変化につなげようとしました。
雨を見て動くワイパー
Y30には雨滴を感知して間欠作動するワイパーが用意されました。日産はこれを、当時の世界初の自動ワイパーシステムと説明しています。雨が降り始めるたびに手で間隔を調整する、その小さな操作を車に任せる装備です。
電子装備はワイパーだけではありません。ターボ車には選曲表示や番組予約のできる電子式ラジオチューナーがあり、室内の空調にもコンピューター制御が使われました。ボンネット先端のマスコットを光らせる仕組みまであります。
雨、音、室温。電子技術の出番は運転席から客室まで広がりました。速く走るためだけでなく、移動中に人が繰り返す操作を減らすことにも使う。Y30の装備には、1980年代の上級車が考えた「便利」が詰まっています。
1984年、VIPに3.0Lターボが加わる
3.0Lターボは、Y30の登場から約1年後に加わりました。まず1984年1月に「V30EブロアムVIP」が最上級仕様として登場。同年6月18日に、VG30ET型V6ターボの「ターボブロアムVIP」と「ターボブロアム」が加わります。
1985年式のターボブロアムVIP保存車は、2,960ccで230PS、最大トルク34.0kgmです。同じVG30ETはフェアレディZにも使われました。2.0LのV6や営業用セダンとは、エンジンも力の出し方も違います。
1984年1月のV30EブロアムVIPには、前後4席の位置を記憶する電動シートが用意されました。後から加わるターボVIPには、車高を保つ装置も備わります。運転席で力を感じるエンジンと、乗る人に合わせる室内装備。Y30は、上級車の価値を二つの方向から広げていました。
ワゴンも、LPGのセダンもいた

Y30には4ドアハードトップ、セダンのほか、ワゴンとバンもありました。写真のワゴンは、長いルーフと荷室側の窓がはっきり見えます。ハードトップの短い後部と比べると、同じセドリックでも車体の役割が違います。
エンジンもV6だけではありません。日産の資料には、直列6気筒ディーゼルのLD28、セダンやバン向けの4気筒ガソリンCA20S、セダン向けLPGのCA20Pが載っています。1984年式NY30型セダンGLの保存車は、CA20Pを使った1,973ccのLPG車です。
V6はY30の大きな変化です。その一方で、ワゴンや営業用セダンには別のエンジンも残りました。車体と燃料を用途に合わせて選べることも、この世代の広さでした。
Y31へ渡した二つの流れ
1987年、ハードトップとセダンは7代目Y31へ進みます。VG型V6はその後も活躍し、上級装備と走りの組み合わせは、次のセドリックでさらに違う顔を見せます。
Y30で始まったのは、単に「直列6気筒をV6に替えた」という話ではありません。静かな車内をつくり、電子装備を増やし、3.0Lターボを後から加える。同時に、セダンやワゴン、LPG車も残した。新しい技術と幅広い使い道を、同じ車名の中に抱えた6代目でした。


セドリック – Y30【V6が主役になった6代目】
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