セドリック – Y32セダンを残し、ハードトップだけを次へ

1991年、セドリックの4ドアハードトップがY32へ変わりました。角を立てた先代に比べると、輪郭は丸く、顔つきもやわらかい。
けれど、穏やかになったのは外側だけ。ブロアムVIPには255PSのターボ、グランツーリスモ・アルティマには後輪の向きも制御するスーパーHICASが用意されます。大きな上級車をどう走らせるか、Y32にはいくつもの答えがありました。
丸みを帯びた、ハードトップの8代目
Y31までのセドリックには、ハードトップとセダンがありました。1991年に新しくなったのはピラードハードトップだけ。営業車などにも使われるセダンは、Y31型のまま続きます。
先代のハードトップと写真を見比べると、Y32はフロントから屋根、後ろまで線がなめらかにつながります。同じセドリックの名前を持ちながら、角張ったY31セダンと、この丸いY32ハードトップが街に並んでいたのです。
車名は一つでも、車体の歩みは一つではありません。Y32はハードトップが進んだ8代目。この違いを頭に置くと、次の世代へ続くセドリックの姿が見えてきます。
一つの車体に、ブロアムとグランツーリスモ
Y32にも、上質さを前面に出す「ブロアム」と、走りを印象づける「グランツーリスモ」が並びました。同じピラードハードトップでも、フロントの表情は一つではありません。
グランツーリスモは丸型4灯のヘッドライトを採用します。ブロアムの落ち着いた顔と比べると、ライトだけで印象が大きく変わる。同じY32の中で性格を選べるようにしたわけです。
四つの丸いライトを置いたグランツーリスモは、なめらかな輪郭の中でもひときわはっきりした顔を持っていました。車体の形は共有しても、前から近づいてくる姿はまるで違います。
255PSを持つブロアムVIP

ブロアムという名から、静かに後席へ乗るクルマを想像するかもしれません。ところが、その最上級に置かれたブロアムVIPは、力も持っていました。
写真の1991年式ブロアムVIPは、全長4,780mm、全幅1,745mm、ホイールベース2,760mm。長いボンネットと後席まで続くルーフを一枚の姿にまとめた、大きなハードトップです。
1991年式のPAY32型ブロアムVIPには、3.0LのVG30DET型V6ツインカムターボが載ります。最高出力は255PS、最大トルクは35.0kgm、車両重量は1,680kg。ブロアムの名を掲げる大きな車体に、Y32の中でも力のあるエンジンが組み合わされていました。
Y32には、このターボのほかにも2.0LのVG20E、3.0LのVG30EやVG30DE、ディーゼルのRD28がありました。同じハードトップのボンネットの下でも、エンジンの幅は広い。255PSのVG30DETはブロアムVIPだけでなく、グランツーリスモ・アルティマにも載りました。
ブロアムVIPの電動格納ドアミラー、フルオートエアコン、速度を一定に保つASCD、運転席エアバッグ。速いだけで上級車を名乗ったわけではありません。移動中に何を運転者へ任せ、何をクルマに任せるかまで考えた仕様です。
このPAY32型ブロアムVIPは、前がストラット式、後ろがマルチリンク式のサスペンション。前後ともベンチレーテッドディスクブレーキを備えます。大きな車体の中で255PSを生かすには、止まり方と路面に対する姿勢も大切でした。華やかな数字の後ろに、そうした足回りが控えています。
グランツーリスモには、後輪を操る選択肢
一方、グランツーリスモ・アルティマのPBY32型には、スーパーHICASが設定されました。前輪を切るだけでなく、後輪の向きも制御する仕組みです。丸型4灯の顔の奥に、曲がり方へ踏み込む装備がありました。
角を曲がるときも、高速で車線を移すときも、クルマの後ろ側はただ引きずられているわけではない。後輪まで動きに加えるという発想は、大きな上級ハードトップにも操る楽しさを求めた、この仕様の性格をよく示しています。
先代Y31は、セドリックにグランツーリスモの名を加え、上級車にも「運転する楽しさ」を掲げました。Y32のアルティマは、外観だけでその言葉を受け継いだのではありません。後輪の動きにまで踏み込んだ選択肢を、同じグランツーリスモの系列へ用意したのです。
アルティマはVIPと同じ255PSのV6ターボを持ちながら、スーパーHICASという選択肢も用意しました。力の数字を共にする二台でも、外から見える顔と、選べる装備が違う。この幅もY32の面白さです。
二つの顔を次へ渡す
1995年、ハードトップはY33へ交代します。ブロアムとグランツーリスモという二つの系列は、次のハードトップにも受け継がれました。
丸みを帯びた姿の中に、静かに乗るための装備と、後輪まで使って曲がる仕組みをそろえたY32。同じ255PSでも、どんな顔と装備で乗るかを選べるところに、この世代らしさがあります。
Y31セダンはその後も残ります。一方のハードトップは姿を変え、上級車の中で走り方を選べる道を、Y33へ渡していきました。


セドリック – Y32【セダンを残し、ハードトップだけを次へ】
Nissan
クルマのかるた
煽りだけで、クルマがわかるか。



