NDはNCで一度現代化したロードスターを、少しだけ原点側へ引き戻すためのモデルでした。
マツダ自身も四代目の開発テーマを「Innovate in order to preserve」と説明しており、環境性能や安全性能の要求がはるかに厳しくなった時代でも、初代が持っていた軽量スポーツの純粋な楽しさを守ることを狙っていました。
しかもNDは歴代で最もコンパクトなロードスターで、先代NCより100kg以上軽いと発表されています。
つまりNDは、進化のために足していく世代ではなく、守るために削っていった世代でした。
「もっと立派」ではなく「もっと本質」


ロードスター - NC1/NC2/NC3 【大事なものを守るために、あえて大きくなった三代目】
NCロードスターについては見た目からもわかる通り、NA→NBのような正常進化ではありません。 これはNAとNBで守ってきた「軽量FRオープンの楽しさ」を、2000年代の安全性や快適性や商品性に合わせてもう一度成立させ直し […
NDの面白さはここです。
普通なら世代が進むほど、ボディは大きく、装備は増え、スポーツカーもどんどん重くなっていく。でもNDは逆をやった。
主査の山本修弘氏はwebCGのインタビューで、開発の途中でいろいろ見つめ直し、「本当に欲しいものだけにしよう。不要なものはそぎ落とそう」と考えたと語っています。
しかもリーマンショックによる開発の停滞すら、ロードスターは本来どうあるべきかを考え直す機会になったとも振り返っている。
NDは、苦しい状況の中で原点回帰を選び直したクルマでした。
だからNDは、軽いだけじゃなく小さい


ロードスター - NB6C/NB8C 【無邪気さを研ぎ澄ませた、NAの成熟形】
NBロードスターは、単なるキープコンセプトではないです。 初代NAが復活させたライトウェイトスポーツの価値を、時代に合わせてもう一度設計し直したモデルです。 1997年10月の東京モーターショーで公開され、1998年に登 […
NDを語るとき、つい「100kg以上軽量化」に目が行きます。
でも本質はそこだけじゃない。
マツダは四代目を「歴代で最もコンパクト」だと説明していて、実際にNDは全体の寸法感からしてかなり凝縮されています。ロードスターは昔からパワーの数字で勝負するクルマではなく、ドライバーがクルマを使い切れることに価値があった。
NDはそこに真正面から戻っていて、サイズ、重量、着座感、視界、操作感まで含めて「人が主役」のスポーツカーとして組み直されている。単なるダイエットではなく、クルマ全体を小さく濃くしたのがNDなのです。
SKYACTIV世代の「人馬一体」


ロードスター - NA6C/NA8C 【失われたライトウェイトの復権】
NAロードスターは70年代に一度ほぼ絶滅しかけたライトウェイトスポーツカーという文化を、80年代末に現代の技術で蘇らせたクルマでした。 マツダ自身も、60〜70年代の小型オープンスポーツが持っていた軽快なハンドリングと気 […
NDは新世代マツダの商品群の一員でもありました。つまり魂動デザインとSKYACTIV技術の文脈の中で作られたロードスターです。
ただし、ここで面白いのは、ロードスターが単にその新世代技術の実験台になったわけではないこと。
マツダは四代目について、SKYACTIV技術を採り入れつつも、感覚や感性を通じて味わう楽しさを高めることに開発の焦点を置いたと説明しています。
要するにNDは、新技術を見せびらかすためのロードスターではなく、新技術で人馬一体を磨き直したロードスターだったわけです。
大事なのは「削る勇気」だった

RX-8 – SE3P【最後のロータリーが選んだ、異端の正解】
マツダRX-8(SE3P)は、ロータリーエンジン搭載の最後の量産車。観音開きの4ドアにNAロータリーという異端な構成が、なぜ「正解」だったのかを開発背景から読み解きます。
山本修弘氏の話を追うと、NDの開発思想はかなりはっきりしています。
世界市場からは当然いろいろな要求が来る。もっと大きく、もっと豪華に、もっと強く、という方向です。
でも山本氏はそれを全部そのまま飲み込まず、ロードスターは何を残すべきかを見極めた。webCGのインタビューで語っている「本当に欲しいものだけ」「不要なものはそぎ落とそう」という一節は、NDのすべてをかなり正確に表しています。
NDが高性能化一辺倒にならず、あくまで「軽快で、使い切れて、楽しい」側に踏みとどまったのは、この判断があったからです。
ND5RCは、四代目の核そのもの

オートザム AZ-1 – PG6SA【軽に迷い込んだ一代限りのガルウイング】
マツダが1992年に送り出した軽ミッドシップスポーツ、AZ-1(PG6SA)。ガルウイングにFRP外装、ミッドシップレイアウト。なぜこんな車が軽自動車として成立したのか、その背景と意味を読み解きます。
まずソフトトップのND5RC。
これは四代目ロードスターの思想をいちばんストレートに表しているモデルです。軽く、小さく、開けて、FRで走る。その原点が最も濃い。
2015年にグローバル導入が始まったNDは、「2015-2016日本カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞し、さらに2016年には「World Car of the Year」と「World Car Design of the Year」も獲得しました。
評価されたのは単なるデザインの美しさだけではなく、現代の条件の中でライトウェイトスポーツの価値をこれだけ鮮明に提示したことだったと見ていいです。
ND5RCは、四代目の本命というより、ロードスターという思想の再提示そのものでした。
速さより反応の良さ

RX-7 – FD3S【ロータリーという幻想が、最も艶やかに咲いた瞬間】
マツダが社運を賭けて送り出したFD3S型RX-7。シーケンシャルツインターボと流麗なボディに込められた設計思想と、ロータリースポーツ最終章としての意味を読み解きます。
NDの美点は、スペック表よりもドライバーへのフィードバックにあります。
アクセルに対する車体の出方、ステアに対する回頭の軽さ、座った瞬間から感じるコンパクトさ。そういう一つひとつの反応が薄まっていない。
マツダが四代目で繰り返し打ち出したのも、絶対性能ではなく「pure driving fun」でした。だからNDは大排気量の速さや高級GT的な重厚さではなく、操作に対してクルマがすぐ返事をしてくることが強みになっている。
ロードスターらしさがいちばん解像度高く見える世代の一つです。
RFで出た、また別の答え

RX-7 – FC3S【異形の心臓が初めて本気で研ぎ澄まされた】
1985年登場のFC3S型RX-7は、ロータリーエンジン搭載車を本格スポーツカーへ昇華させた転換点。ターボ化と車体設計の刷新がもたらした意味を読み解きます。
2016年に追加されたロードスターRFもかなり重要です。
RFは「Retractable Fastback」の名の通り、単なる電動ハードトップではなく、ファストバックの美しいシルエットそのものを商品価値にしたモデルでした。
マツダは、先代のリトラクタブルハードトップが目指した「オープンカーの楽しさを身近に」という価値を引き継ぎながら、従来の考え方にとらわれず、さらに進化させたと説明しています。
しかもRFはファストバックスタイルでありながら、トランク容量をソフトトップと同等に維持し、限られたスペースにルーフを効率よく収納する仕組みまで実現していた。
ただの屋根付きではなく、クーペっぽい美しさとオープンの楽しさを両立させた別解だったわけです。
NDERCのオトナさ

RX-7 – SA22C【ロータリースポーツカーという賭け】
1978年登場のSA22Cは、マツダが初めてロータリーエンジン専用設計で送り出したスポーツカー。サバンナの名を継ぎながら、その中身はまったく別物だった。
RFことNDERCの意味は、ロードスターの世界を少し広げたことにあります。
ソフトトップの軽快さとは違う、静粛性や包まれ感やファストバックならではの雰囲気を加えながら、それでも「Lots of Fun」の価値からは外れない。
マツダもRFを、ロードスターが26年間守ってきた価値を体現する一員だと説明しており、さらに日本導入時には「オープンカーの楽しさを、より多くのお客様にお届けするために」と明言しています。
つまりRFは、ロードスターを別物にしたのではなく、ロードスターにもう一つの入口を増やしたモデルでした。
2018年改良で、NDはさらに熟した

コスモスポーツ – L10A/L10B【世界初の量産ロータリーが背負ったもの】
1967年に登場したマツダ・コスモスポーツは、世界初の2ローター・ロータリーエンジン量産車。技術の証明と企業の存亡を同時に背負った、異形のスポーツカーの意味を読み解きます。
NDは原点回帰だけで終わっていません。
2018年の商品改良では、マツダ自身が四代目のコンセプトを「人生を楽しもう ― Joy of the Moment, Joy of Life」と説明し、ロードスター/RFの両方で人馬一体の走りの楽しさをさらに深める方向を打ち出しました。
海外向けリリースでは2.0Lエンジンの高回転化と出力向上も公表されていて、NDは「軽いからこれで十分」に留まらず、ドライバーの反応にさらに気持ちよく応える方向へ磨かれていったのです。
原点回帰のまま止まるのではなく、原点を現代の技術で熟成させたのが後期NDです。
NDらしさの象徴、『990S』
NDの思想がどれだけ本気だったかは、2021年の990Sを見るとよく分かります。
マツダはこの特別仕様車について、「ロードスターの原点に立ち返り、『軽いことによる楽しさ』を追求した最軽量グレード」と説明しています。
つまり四代目は、世代後半になってもなお「もっと軽さへ」「もっと原点へ」という方向に掘り進められていた。普通は世代後半になるほど装備追加や商品力の底上げに寄るものですが、NDはそこでさえ軽さの価値を掘り返してくる。
これはかなりロードスターらしいし、かなりNDらしいです。
だからこそ、原点回帰でありながら懐古ではない
これがNDの惚れ惚れするほど上手い設計です。
軽くした。小さくした。オープンの楽しさを前に出した。だから一見すると昔へ戻ったように見える。
でも実際には、SKYACTIV世代の技術、現代の安全要求、デザインの完成度、RFのような新しい選択肢まで全部持ち込んだ上で、それでも原点に着地している。懐古趣味ではなく、現代の条件で初代の理想をもう一回成立させたのがNDでした。
2016年に累計生産100万台を達成できたのも、ロードスターが単なる昔の名車でなく、今も更新される存在であり続けたからです。
まとめ
ND5RC/NDERCロードスターを一言でいえば、
現代の技術で、もう一度ロードスターの原点を作り直した四代目です。
NAみたいな発明でも。
NBみたいな定着でも。
NCみたいな現代化でもない。
NDはその全部を踏まえた上で、「じゃあ今、ロードスターはどうあるべきか」にきっちり答えた世代です。
ロードスターの系譜


ロードスター - ND5RC/NDERC 【もう一度、原点に戻ってきた四代目】
Mazda

この記事を書いた人
hodzilla51
クルマの系譜を追っていたら、いつの間にかサイトになっていました
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