コロナ マークII – T60/T70【「コロナの上」が独り立ちするまでの助走】

  • hodzilla51
  • 6分で系譜を理解
コロナ マークII – T60/T70【「コロナの上」が独り立ちするまでの助走】

「コロナの上位版」

コロナ マークIIの出自を一言で言えば、そうなります。

ただ、この車が面白いのは、最初から独立した車格を与えられたわけではなく、あくまで「コロナの延長線上」として世に出たという点です。にもかかわらず、後にマークIIはトヨタの屋台骨を支える独立シリーズへと育っていく。

その最初の一歩が、1968年に登場したT60/T70系でした。

コロナでは届かない層がいた

1960年代後半、日本のモータリゼーションは急速に進んでいました。大衆車としてのカローラやサニーが爆発的に売れる一方で、もう少し上のクラス、つまり「いい車に乗りたいけどクラウンは大げさだ」という層が確実に膨らんでいたのです。

当時のトヨタのラインナップには、大衆車のカローラ、中堅のコロナ、そして高級車のクラウンがありました。問題は、コロナとクラウンの間にかなりの空白地帯があったこと。日産がブルーバードの上にローレルを投入する動きを見せていた時期でもあり、トヨタとしてはこの隙間を放置するわけにはいきませんでした。

ただ、ゼロから新しい車格のクルマを開発するのは時間もコストもかかります。そこでトヨタが選んだのが、すでに市場で信頼を得ていたコロナをベースに、車格を一段引き上げた派生モデルを作るという手法でした。これがコロナ マークIIの出発点です。

コロナの皮を被った別のクルマ

1968年に登場した初代コロナ マークII(T60/T70系)は、名前こそ「コロナ」を冠していますが、中身はかなり別物です。ホイールベースはコロナ(T40系)より延長され、ボディも一回り大きくなっています。要するに、コロナの部品や設計資産を活用しながらも、居住性と走りの質感を明確に上げてきたクルマでした。

エンジンは直列4気筒の1.5Lおよび1.6Lからスタートし、後に1.9Lの直列4気筒も追加されています。T60系が4気筒モデル、T70系が6気筒モデルという棲み分けで、特に注目すべきは直列6気筒エンジン(M型)の搭載です。コロナには載っていなかった6気筒を積んだことで、コロナとは明らかに違う滑らかさと余裕を手に入れました。

6気筒の搭載は単なるパワーアップではありません。当時、6気筒エンジンは「上級車の証」として強い訴求力を持っていました。クラウンと同じ系統のエンジンを小さなボディに積むという構成は、「小さな高級車」という新しい価値を提示するものだったのです。

セダンだけでは終わらない展開力

初代マークIIの特徴のひとつに、ボディバリエーションの豊富さがあります。4ドアセダンを基本としつつ、2ドアハードトップ、ワゴン、さらにはバンまで用意されていました。これはコロナ譲りの実用車としての性格を残しつつ、幅広い顧客層をカバーしようという商品企画の意図がはっきり見えます。

特に2ドアハードトップは、当時のアメリカ車の影響を受けたスタイリッシュなデザインで、若い層にも訴求しました。実用性と見栄えの両方を一台のシリーズで賄おうとする発想は、後のマークII三兄弟(マークII/チェイサー/クレスタ)の原型とも言えるかもしれません。

「コロナの上」から「マークII」へ

初代マークIIは商業的に成功しました。コロナでは物足りないが、クラウンには手が届かない——その層をきっちり捕まえたのです。ただ、成功したからこそ、ひとつの矛盾が浮かび上がります。

それは「コロナの名前がむしろ足かせになる」という問題です。マークIIを買う人は、コロナより上のクルマが欲しくて選んでいる。なのに名前に「コロナ」がついていると、どうしてもコロナの延長に見えてしまう。この微妙な心理的ギャップは、後の世代で「コロナ」の名前が外れ、単に「マークII」として独立していく伏線になっています。

実際、2代目(X10/X20系、1972年〜)ではまだ「コロナ マークII」の名を残しますが、車格の独立性はさらに強まり、4代目(X60系、1980年〜)でついに「コロナ」が外れます。つまり初代T60/T70系は、マークIIが「コロナの派生」から「独立した上級セダン」へと歩み始めた、まさに第一歩だったわけです。

時代が求めた「ちょうどいい上質」

1960年代末の日本は、高度経済成長の真っただ中にありました。所得が上がり、クルマに対する要求も「走ればいい」から「少しでもいいものに乗りたい」へと変わりつつあった時代です。コロナ マークIIは、まさにその空気を読んで生まれたクルマでした。

振り返ってみると、T60/T70系の設計そのものに革新的な技術があったかと言えば、正直そこまでではありません。コロナの資産を活かした堅実な設計であり、飛び道具はない。

しかし、6気筒エンジンの搭載、ボディの拡大、内装の質感向上という「わかりやすい格上げ」を的確に積み重ねたことで、市場のニーズにぴたりとはまったのです。

派手さはなくても、商品企画の精度が高い。これは後のマークIIシリーズ全体に通じる特徴でもあります。初代T60/T70系は、その遺伝子の出発点として、トヨタの車種戦略を語るうえで外せない一台です。

マークIIの系譜

小鍛治康人(やすと)

 

コロナ マークII – T60/T70【「コロナの上」が独り立ちするまでの助走】

Toyota

小鍛治康人(やすと)

この記事を書いた人

hodzilla51

クルマの系譜を追ってたら、いつの間にかサイトになっていました

関連車種