GRヤリス - GXPA16執念が生んだトヨタの異物

小鍛治康人(やすと)約6分

このクルマ、実はトヨタの多方面からのDNAを受け継いでいて、

まずは直系とも言えるVitz系のコンパクトカーのDNAです。特にVits GRMNはGRヤリスの起源と言っても過言ではありません。

次にWRCホモロゲーションモデルのDNA。セリカ GT-Fourを最後にトヨタはWRCホモロゲモデルを出していませんでしたが、ここにきて約「35年越し」に復活したラリー4WDの血筋も引いているのです。

…と二つあるのですが、今回は直系であるVitzから続くDNAを中心としてみていきます。(セリカまで含めるととんでもない文量になってしまうので…)

GRヤリスの起源「Vitz GRMN」

Vitz GRMN - NCP131【GR ヤリスの前日譚】

ヴィッツの話はするか迷いましたが、GRヤリスのDNAを語る上でこのクルマは必須だと思うので書きました。 Vitz GRMNが切り開いたGRの夜明け https://kuruma-dna.com/nre210h 2017年 […

2017年に150台限定で発売されたVitz GRMNは、1.8 Lスーパーチャージャーエンジンと6速MTを組み合わせた小型高性能モデルでした。

台数こそわずかでしたが、「もっと過激なホットハッチを市販化できる」という社内の自信を育て、後のGRヤリス計画に直結する重要な一歩となります。

社長勅令で始動したホモロゲーション計画

トヨタ社長兼マスタードライバーの豊田章男(Morizo)氏は、「WRCで勝てる市販車をつくる」という明確な目標を掲げ、開発部門を束ねるGAZOO Racing Companyにプロジェクトを指示しました。

開発責任者にはWRC現場出身の斎藤直彦氏が就任し、「走る→壊す→直す」を徹底する耐久テストを主導し、開発サイクルを確立していきます。

この鍛えの哲学が、後にGRヤリスを生み出す原動力になります。

モトマチ「GR Factory」誕生

GRヤリスについては他の車種とは違い、異例中の異例で量産体制の革新が行われました。ここからもGR ヤリスに対するトヨタの本気度が伺えますね。

2020年、愛知・元町工場の一角にGR Factoryが新設されます。コンベヤを使わず、セルごとに車体がAGVで運ばれる方式を採用し、熟練工が手作業に近い精度で溶接・組付けを行います。

余談ですが、低ボリュームでも高剛性と高精度を両立できるこのラインは、現在ではGRヤリスとGRカローラを同時に生産するようになりました。

初代GR Yarisの登場

こうして誕生したGRヤリス(GXPA16)は、前半分にGA-B、後半分にGA-Cを組み合わせた3ドア専用ボディを採用し、1.6 L直列3気筒ターボエンジン(G16E-GTS:272 PS/370 Nm)と前後可変配分4WDシステムである「GR-FOUR」を搭載しました。

アルミパネルやCFRPルーフで車重を1,280 kgに抑え、量産車では異例の「ホモロゲーション専用シャシー」を実現しています。

GRMN ヤリスでさらに強化

発売から2年後、トヨタ Gazoo Racingは500台限定のGRMN ヤリスを東京オートサロンで公開しました。

スポット溶接を560点増やし、CFRPパーツと2座化で約20 kgの軽量化を達成。「サーキットパッケージ」と「ラリーパッケージ」を用意し、予約抽選には1万件を超える応募が殺到しました。

大幅改良と8速AT「GR-DAT」

2024年の改良では、エンジンを275–304 PSまで強化するとともに、8速AT「GR-DAT」を追加して幅広いドライバーがモータースポーツに参加しやすい体制を整えました。

コクピットは15°ドライバー向きに再設計され、前後バンパーは交換しやすいモジュール式に変更されています。これらは「より多くの人に走る喜びを届けたい」というMorizo氏の意向に基づいています。

派生と今後の展望

GRカローラ – GZEA14H【カローラの皮を被った、本気のホモロゲマシン】

トヨタが「カローラ」の名でWRC直系の3気筒ターボと4WDを載せた異端のホットハッチ。GRカローラはなぜこの形で世に出たのか、その背景と意味を読み解きます。

GR Factoryは同じセル方式でGR カローラも生産しており、需要増に対応するため一部生産を英国バーナストン工場へ移す計画も報じられています。

さらに、2.0 Lターボをリアミッドに搭載するなど狂気に満ちた「GRヤリス Mコンセプト」も試験走行を重ねているなど、GRヤリスから始まる新たなDNAは今後も目を離せませんね。

まとめ

Vitz GRMNで芽生えた挑戦心は、Morizo氏のトップダウンと斎藤氏の現場主導によってGRヤリスへ結実しました。

その後も限定GRMNや8速ATの導入で磨きをかけ、「モータースポーツで鍛えて市販で還元する」というGAZOO Racing流ものづくりが確立されています。

今後もGR Factoryを中心に、トヨタ「走る楽しさ」を体現するホットハッチの血統が受け継がれていくことでしょう。

このクルマとGR Factoryを、巨大上場企業のトヨタがなぜ作れたのか。会社側の事情はコラムで書いています。

豊田章男はなぜ許されたのか——株主127万人のトヨタでGRヤリスが生まれた理由

創業家が議決権を握っていないトヨタ自動車で、なぜGRヤリスとGR Factoryが実現できたのか。株主127万人という資本構成、4610億円の赤字から始まった14年、取締役再任賛成率から、豊田章男が作った「挑戦が許される構造」を読み解きます

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GRヤリス - GXPA16【執念が生んだトヨタの異物】

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