エキシージ S – S2【スーパーチャージャーが解き放った軽量ミッドシップの凶暴】

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エキシージ S – S2【スーパーチャージャーが解き放った軽量ミッドシップの凶暴】

900kgに満たない車体に、240馬力。パワーウェイトレシオで言えば、当時のポルシェ911カレラSにも迫る数字です。

しかもそれが、エアコンすら標準装備ではないイギリスの小さなメーカーから出てきた。

2008年のエキシージ Sは、ロータスという会社が「軽さ」の先に何を見ていたのかを、もっとも過激な形で示した一台でした。

エリーゼの屋根を閉じた車が、なぜここまで化けたのか

エキシージという車種の出自を整理しておくと、話が早いです。もともとはエリーゼをベースにしたクローズドボディのレース向け車両として2000年に登場しました。初代S1エキシージはローバーKシリーズエンジンを積んだ、いわば「屋根付きエリーゼ」の延長線上にある車です。

それが2004年のS2世代で大きく変わります。エンジンがトヨタ製の2ZZ-GEに換装され、車体もエリーゼS2のアルミ押出材バスタブシャシーに移行しました。この時点でエキシージは、エリーゼとプラットフォームを共有しつつも、よりハードコアなドライビングマシンとして独自のポジションを確立し始めていたわけです。

ただ、2ZZ-GEの自然吸気仕様は約190馬力。十分に速いけれど、車重の軽さに対してエンジンが「おとなしい」と感じる層が確実にいた。ロータスがそこに手を入れないはずがありません。

トヨタ製エンジンにスーパーチャージャーという選択

エキシージ Sの核心は、2ZZ-GEにルーツ式スーパーチャージャーを組み合わせたことにあります。排気量はわずか1.8リッター。そこから240馬力、トルク約235Nmを引き出しています。

なぜターボではなくスーパーチャージャーだったのか。ここにロータスらしい判断があります。ターボはピークパワーを稼ぎやすい反面、どうしてもレスポンスにラグが出る。一方、スーパーチャージャーはクランクシャフトから直接駆動するため、アクセル操作に対するレスポンスがほぼリニアです。

900kg未満の車体では、わずかなトルクの遅れや唐突さが挙動に直結します。ロータスにとっては「どれだけ馬力が出るか」よりも「ドライバーの意図通りにパワーが出るか」のほうが優先事項だった。スーパーチャージャーという選択は、カタログスペックの最大化ではなく、操縦性との整合を取るための判断だったと言えます。

ちなみにこのスーパーチャージャーの開発には、ロータス自身のエンジニアリング部門が深く関わっています。ロータスは自動車メーカーであると同時に、他社へのエンジニアリングコンサルティングを行う会社でもある。過給システムのチューニングやECUのセッティングは、まさにその知見が活きた領域です。

数字が語る「軽さ×過給」の破壊力

240馬力という数字だけ見れば、2008年当時でも突出して大きいわけではありません。同時期のシビック タイプR(FD2)が225馬力、RX-8が235馬力。国産スポーツカーと比べても、飛び抜けた差はないように見えます。

しかし車重が違います。エキシージ Sの乾燥重量は約875kg。シビック タイプRは約1,270kg、RX-8は約1,310kg。つまりエキシージ Sのパワーウェイトレシオは約3.6kg/馬力。これは同時代のポルシェ・ケイマンS(295馬力/1,340kg=約4.5kg/馬力)を大きく上回る数値です。

0-100km/h加速は4.1秒前後とされています。この数字は、当時の量産車としてはかなり上位に位置するものでした。しかもそれを、1.8リッター4気筒という小さなエンジンで実現している。大排気量や多気筒に頼らずに速さを成立させるという、ロータスの思想がもっとも先鋭的に表れたモデルです。

乗り味は「速い」だけでは語れない

エキシージ Sに乗った人の多くが口を揃えるのは、「速さよりも、操る感覚の密度が異常」ということです。ミッドシップレイアウトゆえにノーズの入りが鋭く、軽い車体はステアリング操作に対してほぼ遅延なく反応します。

スーパーチャージャーの過給特性がこの操縦感覚を支えています。低回転域からトルクが立ち上がり、高回転まで途切れなく伸びる。自然吸気の2ZZ-GEが持っていたVVTL-i(可変バルブタイミング&リフト)の高回転キャラクターに、中低速の力強さが加わった形です。

一方で、快適性はほぼ切り捨てられています。エアコンはオプション、パワーステアリングもなし。ロードノイズは盛大に入り、乗り心地は硬い。長距離移動に使おうという発想自体が設計の前提にありません。

ただ、これは弱点というよりも設計思想の帰結です。ロータスの創設者コーリン・チャップマンが残した「軽量化はすべての性能を向上させる」という哲学を、エキシージ Sは忠実に、そしてやや過激に体現しています。快適装備を削ったのではなく、最初から優先順位に入っていなかったと言うほうが正確でしょう。

S2エキシージ Sが系譜に残したもの

このS2世代のエキシージ Sは、後のS3世代(2012年〜)への重要な布石になっています。S3ではトヨタ製2GR-FEのV6・3.5リッターにスーパーチャージャーを組み合わせ、最終的には430馬力にまで到達しました。

S3の過激さは、S2で「軽量車体に過給エンジンを載せる」という方程式が成立することを証明できたからこそ実現したものです。つまりS2のエキシージ Sは、ロータスが「軽さだけの会社」から「軽さ×パワーの会社」へ踏み出した転換点だったと位置づけられます。

もうひとつ見逃せないのは、トヨタとの関係です。2ZZ-GEというエンジンは、もともとセリカやカローラ・ランクスに搭載されていた量産ユニットです。それをロータスが独自に過給して別次元の車に仕立てた。この協業の延長線上に、S3でのV6採用や、さらにはエミーラでのAMGエンジン搭載という流れがあります。

ロータスは自社で大排気量エンジンを持たない代わりに、他社のエンジンを自分たちの文脈で使いこなす技術を磨いてきました。エキシージ Sは、その手法が最も鮮やかに成功した事例のひとつです。

「足し算」ではなく「掛け算」の車

多くのスポーツカーは、パワーを上げるか、電子制御を足すか、装備を豪華にするかで進化を語ります。エキシージ Sのやり方はそれとは違いました。875kgの車体に240馬力を載せるという、要素の少なさと組み合わせの鋭さで勝負した車です。

足し算ではなく掛け算。少ない要素同士の相乗効果で、価格帯も排気量もまるで違う車たちと同じ土俵に立ってしまう。それがこの車の本質であり、ロータスという会社の本質でもあります。

2008年という時代は、リーマンショックの直前でもありました。

世界の自動車産業が効率や環境対応に舵を切り始めていた時期に、こういう車が存在していたこと自体が、ある種の奇跡だったのかもしれません。

だからこそ、エキシージ Sは今なお「あの時代にしか生まれえなかった一台」として語られ続けているのです。

エキシージの系譜

小鍛治康人(やすと)

 

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小鍛治康人(やすと)

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hodzilla51

クルマの系譜を追ってたら、いつの間にかサイトになっていました

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