ランクスの中古車は買い?カローラの皮を被った高回転ホットハッチ、最後の選択肢

小鍛治康人(やすと)約10分
画像:Kalmarle/CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

カローラランクス。

名前だけ聞くと「ああ、カローラのハッチバックね」で終わりそうな車です。実際、1.5リッターのXや1.8リッターのSは、何の変哲もない実用車として静かに役目を終えました。

でも、Zグレードだけは別物です。積んでいるのは、ヤマハと手を組んで仕上げた1.8リッターの高回転型「2ZZ-GE」。セリカSS-IIやロータス・エリーゼにも積まれた、190馬力のユニットです。

高回転でハイカムに切り替わった瞬間の加速は、カローラという名前からは想像がつきません。

ただ、この車を中古で探すなら、最初に知っておくべきことがあります。狙うべきはZだけで、そのZには2ZZ-GE特有の持病がある。ランクスの中古選びは、Zの中から「エンジンが健全な個体」を見つけられるかどうかで、ほぼ決まります。

まず知っておきたい、グレードと年式の違い

カローラFX – AE82/AE92カローラが「走り」を分離した実験の記録カローラFXは、大衆車カローラから走りの楽しさだけを切り出そうとしたトヨタの挑戦でした。AE82とAE92、2世代にわたるその試みの背景と意味を読み解きます。

ランクスは2001年1月に登場した9代目カローラの5ドアハッチバックで、2006年9月に生産を終えました。ネッツ店で売られた兄弟車「アレックス」は中身がほぼ同じで、2ZZ-GEを積むグレードはアレックスでは「RS180」と呼ばれます。

グレードは大きく3つです。1.5リッターのX(1NZ-FE)、2002年9月に加わった1.8リッターのS(1ZZ-FE)、そして2ZZ-GEのZ。XとSは4速ATだけで、6速MTが選べるのはZだけです。Zには4速ATもありますが、この車をわざわざ選ぶ理由のほとんどは6速MTにあります。

年式は、前期(2001年1月〜)、中期(2002年9月〜)、後期(2004年4月〜2006年9月)の3つに分かれます。中期で欧州仕様に近いフロントデザインになり、後期で涙滴型のヘッドランプに変わりました。

走りの面で大きいのは後期です。後期のZは、ほかのグレードとは別にサスペンションとブレーキの設定が見直され、走りの性格がはっきり強められています。同じZでも、選べるなら後期を選びたいところです。

TRDが仕立てたコンプリートカー「TRD Sports M」もありましたが、流通はごくわずかです。燃料はハイオク指定です。

中古で警戒すべきは、2ZZ-GEの油圧低下

レビン/トレノ - AE92FFになった日、伝説が分岐したAE86の後継としてFF化されたAE92レビン/トレノ。なぜFRを捨てたのか、何を得て何を失ったのか。1987年登場の5代目カローラレビン/スプリンタートレノの存在意義を読み解きます。

ランクスZの弱点を語るなら、まず外せないのがコーナリング中の油圧低下です。2ZZ-GEのオイルパンには、オイルの片寄りを防ぐ仕切り(バッフルプレート)がありません。横Gがかかり続けるとオイルが片側に寄り、ポンプがオイルを吸えなくなって油圧が落ちることがあります。

普通に街を走る分には、まず問題になりません。怖いのは、ワインディングを攻めたり、サーキットを走ったりしてきた個体です。油圧低下を繰り返すと、軸受けやカムまわりにダメージが溜まっていきます。

オーナーの間で知られている対策は、仕切りの付いた1ZZ-FE用のオイルパンに交換することです。22万km走ったランクスZのオーナーも、オーバーホールの際にこの交換を済ませています。対策済みの個体なら、それだけで安心材料がひとつ増えます。

油圧低下の影響として、1番・2番シリンダーの吸気側ハイカムの摩耗を指摘する声もあります。カム山が減るとハイカムがローカムと変わらなくなり、高回転でのパワーががくっと落ちる。確立した知見とまでは言えませんが、ハイカムに切り替わってからの伸びが鈍い個体は、疑ってかかったほうがいいでしょう。

もうひとつは油温です。トヨタ版の2ZZ-GE搭載車には純正のオイルクーラーが付いておらず、長時間のサーキット走行では油温が上がりやすくなります。サーキットを走るつもりなら、オイルクーラーの追加はほぼ前提です。

どれも根っこは同じで、2ZZ-GEはオイル管理に厳しいエンジンだということです。オーナーの間では3,000〜5,000km程度でのこまめな交換が勧められています。前オーナーの整備記録が残っているかどうかは、この車では特に重い判断材料です。

エンジン以外で気をつけたいところ

レビン/トレノ - AE101名前は同じでも、もう86じゃないAE86の後継として登場しながら、FF化と高回転エンジンで別物に変わったAE101型レビン/トレノ。4A-GEの到達点と、FRを捨てた理由を読み解きます。

エンジン以外の弱点は、この年代のカローラとして年式相応のものが中心です。

ひとつはクラッチまわりです。6速MTはZだけの装備なので、MTとしての消耗はこのグレードに集中します。クラッチが切れなくなった原因がマスターシリンダーの劣化だった、という例もあります。交換歴は確認しておきたいところです。

エアロパーツにも注意が要ります。社外エアロには、すでに廃番になっているものが少なくありません。割れや欠けのある個体は、元の姿に戻すのに苦労すると思っておいたほうがいいでしょう。

ほかには、フロントガラスまわりのシーラー劣化による雨漏りの報告や、ヘッドライトの黄ばみがあります。どちらも走りには関係ありませんが、雨漏りは室内に二次被害を広げるので、放置は禁物です。

逆に、エンジン本体は強い

レビン/トレノ – AE111最後のレビトレが背負ったものAE111型レビン/トレノは、カローラ系スポーツクーペの最終世代。4A-GEの20バルブ化という技術的到達点と、時代の変化に飲まれた終幕の意味を読み解きます。

油圧低下の話をしましたが、2ZZ-GEそのものは素性のいいエンジンです。2002年のインターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤーでは、1.4〜1.8リッター部門で賞を取っています。

頑丈さの実例もあります。新車から19年、22万km走ったランクスZは、オーバーホールで開けたときに「ブロックはきれいだった」と言われています。このときは、ピストンリングやバルブステムシール、タイミングチェーンといった部品を新品でそろえられました。

つまり、オイル管理と油圧低下対策さえしてあれば、長く付き合えるエンジンです。弱点がはっきりしている分、狙いを絞りやすい車とも言えます。

カローラがベースであることも強みです。足回りやブレーキ、電装系の消耗品は比較的手に入りやすく、普段の維持で困る場面は多くありません。5ドアで荷物も載るので、毎日の足として使えるのもこの車の美点です。

現車確認で見るべきポイント

レビン/トレノ- AE86最後のFRカローラが伝説になった理由1983年登場のAE86型レビン/トレノは、カローラ系最後のFR駆動モデル。軽量ボディと4A-GEユニットの組み合わせが走り好きの心を掴み、生産終了後に伝説化した異例の一台を読み解きます。

まず、本当にZかどうかを確かめてください。「エアロツアラー」という名前はXにも付いていたので、名前だけでは判断できません。型式がZZE123であること、エンジンが2ZZ-GEであることを、車検証と実車で確認します。アレックスならRS180が同じ中身です。

次に整備記録です。オイル交換の頻度と、オイルパンの交換歴を見ます。1ZZ-FE用オイルパンへの交換が記録に残っていれば、大きな安心材料です。

試乗できるなら、ハイカムに切り替わってからの伸びを確かめます。切り替わった瞬間に音と加速がはっきり変わるのが、本来の2ZZ-GEです。変化が鈍い、上まで気持ちよく回らない、という個体はカムの摩耗を疑います。暖まったあとの油圧警告灯や、アイドリングの安定も見ておきましょう。

クラッチは、切れ具合とつながる位置を確認します。室内のカーペットの湿りや、フロントガラスまわりの水の跡もチェックしておきたいところです。

サーキット走行歴のある個体は、エンジンだけでなく、ボディや足回りの状態も要注意です。

この車に手を出してよい人、やめた方がよい人

レビン/トレノ - TE71最後のFR直4レビンという十字架AE86の前夜に存在した最後のFR・直4レビン/トレノ。TE71は地味な存在に見えて、カローラスポーツの系譜が大きく転換する直前の、重要な結節点でした。

向いているのは、高回転NAエンジンの快感を、日常の延長線上で味わいたい人です。ハイカムに切り替わるまでは普通の実用車で、踏めば別の顔が出てくる。見た目は地味なカローラのハッチバックなので、どこへ乗って行っても目立ちません。

逆に、とにかく速さを求める人には向きません。シャシーはあくまでカローラベースで、エンジンの性能に車体が追いついていないという評価は当時から一貫しています。同じ時代のシビックタイプR(EP3)のような一体感を期待すると、物足りなさを感じるはずです。

手間をかけずに乗りたい人にも、正直おすすめしにくい車です。2ZZ-GEはオイル管理を怠ると致命傷になりかねないエンジンで、「乗りっぱなし」では済みません。

維持費も、普通のコンパクトカーと同じ感覚ではいられません。Zはハイオク指定で、実燃費は街乗りで8〜10km/L程度というオーナー報告があります。年式的に13年超の重課税の対象にもなっています。とはいえ排気量は1.8リッターなので、税金が極端に重くなるわけではありません。

同じ2ZZ-GEを積む国内の車には、クーペのセリカSS-II(ZZT231)や、ワゴンのカローラフィールダーもあります。5ドアハッチバックの使い勝手と2ZZ-GEを両立できるのは、ランクスZとアレックスRS180だけです。

結局、ランクスの中古は買いなのか

ランクス
画像:Kalmarle/CC BY 4.0(Wikimedia Commons)

結論から言えば、Zの健全な個体に出会えるなら、買いです。

ヤマハと仕上げた高回転NAエンジンに6速MT、それを5ドアのカローラに積んだ車。こういう組み合わせは、もう新車では出てきません。

ただし、選ぶのはZだけ(この記事を読んでいる人は、Z以外は眼中にないでしょうけど…)。そのうえで、オイル管理の記録が残っていて、油圧低下の対策が済んでいる個体を探すこと。できれば後期を狙いたいところです。

タマ数は、すでに多くありません。程度のいい個体に出会えたなら、それは真剣に検討する価値のある一台です。

カローラの名前に隠された、2ZZ-GEの本気。それを味わえる時間は、もうそれほど長くは残っていません。

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小鍛治康人(やすと)
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