ヴェルファイア – 40系【アルファードの影を抜け出した、攻めの再定義】

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ヴェルファイア – 40系【アルファードの影を抜け出した、攻めの再定義】

ヴェルファイアという車名を聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。「アルファードの顔違い」。そう答える人が多いはずです。実際、それは長いあいだ、ほぼ正解でした。ただ、2023年に登場した40系は、その図式を意図的に壊しにかかっています。

兄弟車という宿命

ヴェルファイアの出自を語るには、まずアルファードとの関係を整理する必要があります。初代ヴェルファイア(20系)が登場したのは2008年。それ以前、トヨタの大型ミニバンには「アルファードG」と「アルファードV」という販売チャネル違いの兄弟がいました。トヨペット店向けがG、ネッツ店向けがV。これを車名レベルで分離したのがヴェルファイアの始まりです。

つまり、ヴェルファイアは最初から「アルファードと中身は同じだけど、別の顔で別の店で売る車」として生まれています。メカニズムもプラットフォームも共有。違うのは主にフロントフェイスとリアのデザイン、そして味付けの方向性でした。

20系、30系と世代を重ねるなかで、アルファードが「品格・高級感」を軸にしたのに対し、ヴェルファイアは「迫力・押し出し」を担当しました。大きなメッキグリル、鋭い目つき。いわゆる「強面ミニバン」路線です。この棲み分けは商業的にうまく機能していましたが、30系後期になると販売台数でアルファードに大きく差をつけられるようになります。

30系後期で起きた「逆転」

30系の前期(2015年〜)では、ヴェルファイアのほうがやや売れていた時期もありました。ところが2018年のマイナーチェンジ以降、状況が変わります。アルファードのフロントフェイスが大型グリルを採用し、押し出しの強さでヴェルファイアとの差がほぼなくなったのです。

こうなると、ユーザーはより知名度の高いアルファードに流れます。「迫力のある高級ミニバン」という市場で、アルファードが一人勝ちする構図ができあがりました。ヴェルファイアは存在意義そのものを問い直す必要に迫られたわけです。

販売チャネルの統合という流れも追い打ちをかけました。トヨタは2020年に全車種併売化を実施。ネッツ店専売という差別化の根拠がなくなり、「同じ店でアルファードもヴェルファイアも買える」状態になった。こうなると兄弟車の片方は、よほど明確な理由がなければ選ばれません。

40系の戦略──「違う車」にする

2023年6月に発売された40系で、トヨタは大胆な手を打ちました。まず、グレード構成を大幅に絞ったのが象徴的です。アルファードには幅広いグレードが用意される一方、ヴェルファイアは「Z Premier」を頂点とする少数精鋭の構成。エントリーグレードを削り、上位グレードに集中させました。

パワートレインの差別化も明確です。アルファードの主力が2.5Lハイブリッドであるのに対し、ヴェルファイアには2.4Lターボエンジン(T24A-FTS型)が設定されています。最高出力279ps、最大トルク430Nm。このエンジンはレクサスNXやクラウンクロスオーバーにも搭載されるユニットで、ミニバンとしては明らかにオーバースペックです。

ただ、このオーバースペックこそが狙いでしょう。ヴェルファイアを「走りの質で選ぶ高級ミニバン」として位置づけ直す。アルファードとの関係を「顔違いの兄弟」から「性格の違う別の車」に変えようとしているわけです。

TNGA-Kが支える走りの説得力

40系のプラットフォームはTNGA-K(GA-Kプラットフォーム)です。先代30系のMCプラットフォームからの刷新で、ボディ剛性は大幅に向上しています。これは単にカタログ上の話ではなく、実際に乗ると明確に違いがわかるレベルです。

特にヴェルファイアでは、専用チューニングの足回りが与えられている点が重要です。フロントのパフォーマンスダンパー、リアスタビライザーの専用セッティングなど、アルファードとは異なる味付けが施されています。2トンを超える車重でありながら、コーナリング時のロールが抑えられ、ドライバーズカーとしての性格が強まっています。

周波数感応型のショックアブソーバーも採用されており、路面の細かい振動は吸収しつつ、大きな入力にはしっかり踏ん張る。快適性と操縦安定性の両立を、かなり高い次元で実現しています。2トン超のミニバンでこれをやるのは、プラットフォームの基礎体力がなければ不可能です。

後席の価値は変わらない、ただし文法が違う

高級ミニバンである以上、後席の居住性は最重要項目です。40系ヴェルファイアも当然、ここは外していません。エグゼクティブラウンジシートは電動オットマン、ベンチレーション、シートヒーターを備え、アームレストには格納式テーブルも装備されます。

ただ、ヴェルファイアの後席空間には、アルファードとは少し違うニュアンスがあります。アルファードが「もてなしの空間」を志向するのに対し、ヴェルファイアは「自分のための上質な移動空間」という色合いが強い。内装のカラーリングも、ブラック基調でスポーティな印象に振られています。

要するに、誰かを乗せるための車か、自分が乗るための車か。その微妙な違いが、40系では意識的に拡大されています。

ヴェルファイアが手に入れた「選ぶ理由」

40系ヴェルファイアの本質は、「アルファードの代わり」ではなく「アルファードでは手に入らないもの」を提供することにあります。2.4Lターボの力強い加速、専用セッティングの足回り、スポーティな内外装。これらはすべて、アルファードを選んだだけでは得られない要素です。

販売戦略としても、グレードを絞ることで「迷ったらアルファード、わかって選ぶならヴェルファイア」という構図を作っています。台数を追うのではなく、指名買いされる車にする。これは兄弟車の生存戦略として、かなり合理的な判断です。

もちろん課題がないわけではありません。車両本体価格は600万円台後半からスタートし、上位グレードでは800万円を超えます。レクサスLMという「さらに上」の存在も控えている。価格帯としてはかなり攻めた領域です。

それでも、40系ヴェルファイアがやろうとしていることは明快です。15年間続いた「顔違いの兄弟」という構造から脱却し、走りと個性で選ばれる高級ミニバンになる。その意思表示は、パワートレインの選択にも、足回りのチューニングにも、グレード構成にも、一貫して表れています。

ヴェルファイアはようやく、アルファードの影ではなく、自分自身の輪郭を手に入れた。そう言える一台です。

ヴェルファイアの系譜

小鍛治康人(やすと)

 

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Toyota

小鍛治康人(やすと)

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hodzilla51

クルマの系譜を追ってたら、いつの間にかサイトになっていました

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