ヴァンテージとは
ヴァンテージは、アストンマーティンが「少しだけ手の届く価格」を覚えたクルマです。
2005年のV8 Vantageが出るまで、アストンは大きくて高いGTを少数だけ作る会社でした。作れば作るほど台数は限られ、ブランドは細っていきます。そこで用意されたのが、DB9より小さく、安く、そして明確にスポーツカーである一台でした。フォード傘下で整えられた生産体制がなければ、この判断は成立していません。
ただし安くしただけではありませんでした。フロントミッドにV8を置き、トランスアクスルで前後重量を配分する。骨格はアルミの接着構造。中身は上位モデルと同じ思想で作られています。
2011年のAM310、ヴァンテージ Sで性格が変わります。出力と足まわりを引き締め、紳士的なGTだったこの車をはっきりと攻撃的にしました。2015年のAM310 GTは初代の集大成で、10年続いた設計の熟成をひとまとめにしています。
2018年のAM701で、心臓が替わりました。メルセデスAMG製の4.0LツインターボV8です。自社でエンジンを開発し続けることが難しくなった小規模メーカーにとって、これは敗北ではなく延命の選択でした。空力も操縦性も現代の水準へ引き上げられ、ヴァンテージはアストンの中で最も走りに寄った車種としての位置を確立しています。
2005年から現行まで。ヴァンテージの歴史は、小規模な高級車メーカーが生き残るために何を自前で持ち、何を他社から借りるかを決めていく記録です。




