308馬力のEJ207、DCCD、そして「インプレッサ」を名乗る最後のSTI。GRB/GVBは、スバルのスポーツセダン/ハッチが最も濃かった時代の終着点です。
中古市場では、状態と年式で価格差が非常に大きい世代でもあります。そしてその価格差には、ちゃんと理由があります。
前提を整理しておきます。GRBは2007年10月に登場したハッチバックで、2010年にはセダンのGVBが加わりました。エンジンは水平対向4気筒ターボのEJ207型で308馬力・43.0kgf·m。駆動はDCCDを備えた四輪駆動、変速機は6速MT。「インプレッサ」を名乗った最後のSTIです。
年式(型)で中身が違う。まずここを押さえる

GRBは2007年10月の登場から、毎年のように改良が入っています。中古で選ぶときは、走行距離より先に「何型か」を確認してください。
特に議論が多いのが、初期のA型です。オーナーの間では、いわゆる「棚落ち」と呼ばれるピストンまわりの損傷によるエンジンブローが語られ続けてきました。起きた場合はエンジン載せ替えとなり、ディーラーで80万円、町工場でも60万円以上という金額が挙がります。
ここは正確に書いておきます。これはメーカーが認めたリコールではなく、オーナーコミュニティで長く共有されてきた経験則です。 すべてのA型が危ないわけでも、B型以降なら絶対安全なわけでもありません。ただ、中古を選ぶ立場としては、初期型を避けるか、あるいはエンジンに手が入っている記録を確認するというのは、合理的な判断です。
2010年に追加されたGVB(セダン)や、その後のspec C、tSといった特別仕様も、年式ごとに装備と味付けが違います。狙いを決めてから探すほうが結果的に早いでしょう。
整理すると、ハッチバックのGRBは実用性と取り回し、セダンのGVBは剛性と見た目の好み、spec Cは軽量化と競技志向、tSはSTIが仕立てた快適寄りの特別仕様、という住み分けになります。中古価格もこの順で傾向が出ます。
なお、この世代は年次改良の幅が大きく、同じ「GRB」でも足まわりの設定やDCCDの制御が違います。試乗できるなら、複数の型に乗って比べる価値があります。
この世代で語られる持病

パワーステアリングポンプからのオイル漏れ。 GRBの初期で有名な持病のひとつです。対策品への交換で5万円前後という金額が挙がります。エンジンルームを覗いて、ポンプ周辺やその下の滲みを確認してください。
これらはいずれも「起きたら困るが、直せば戻る」種類の故障です。金額の目安としては、パワステポンプが5万円前後、二次エア関連が7万円前後。エンジン載せ替えの60〜80万円と比べれば、桁がひとつ違います。 中古選びで神経を使うべきは、あくまでエンジン本体のほうです。
二次エア導入装置(二次エアバルブ)の固着。 排気の浄化のために使われるバルブが錆で固着する症状で、こちらは7万円前後という数字が語られます。警告灯が点いて初めて気づくことが多く、車検前に発覚すると面倒です。
エンジン前側からのオイル漏れ。 カムシャフト側のシール、あるいはオイルポンプの締結部の緩みが原因として挙げられます。水平対向はもともと合わせ面が多く、年数が経てば滲みは出ます。問題は「滲み」で止まっているか、「漏れ」まで進んでいるかです。
ラジエターの樹脂部の劣化。 年式相応の話で、上下のタンク部から漏れます。冷却系はEJのターボ車にとって死活問題なので、リザーバータンクの液量と色、周辺の結晶化した跡は必ず見てください。
加えて、この世代でよく話題になるのがプラグとイグニッションコイルです。水平対向はプラグ交換の作業性が悪く、工賃が高くつきます。交換時期を過ぎている個体は、購入後すぐに費用が発生すると考えてください。
クラッチも同様です。6速MTのクラッチは、ブーストを上げた個体や競技使用の個体では確実に消耗しています。試乗では坂道発進での滑り、繋がる位置、踏力を確かめてください。
チューニング歴をどう見るか

WRX S4 – VBH【STIなき時代の、スバルが出した答え】
2021年登場のWRX S4(VBH)は、STIセダンが消えた時代にスバルが送り出した新世代AWDスポーツセダン。2.4Lターボとアイサイトの融合が意味するものを読み解きます。
販売店の説明で「ノーマル戻し済み」と書かれている個体には、特に注意してください。戻したということは、何かをやっていたということです。何を、どこまでやったのかを聞いて、答えられないなら見送るのが安全です。
この世代は、ブーストアップやECU書き換え、タービン交換といった改造の裾野が非常に広い車です。そしてEJ207は、素の状態では頑丈でも、無理な過給と熱が入ると一気に痛むエンジンでもあります。
見るべきは、社外パーツの有無そのものより「何をどこまでやったか」です。マフラーと吸気系だけなら実害は小さい。一方でECUに手が入り、ブースト圧を上げた履歴がある個体は、エンジン内部にダメージが蓄積している可能性があります。しかもECUはノーマルに戻せてしまうので、外観からは判断できません。
だから質問の仕方が重要になります。「ノーマルですか」ではなく、「ECUに手を入れた履歴はありますか」「前オーナーはサーキットに行っていましたか」と具体的に聞いてください。曖昧に濁される場合は、それ自体が答えです。
ブースト計や油温計などの追加メーターが後付けされていた跡(配線の引き回し、ピラーの穴)も手がかりになります。外した跡が残っている個体ほど、何かをやっていた可能性が高い。
サーキット走行歴のある個体も同様です。タイヤの偏摩耗、ブレーキローターの状態、追加された油温計や油圧計の跡、ロールバーの取り付け穴。こうした痕跡から使われ方を推測してください。
逆に、記録簿がしっかり残っていて、消耗品が定期的に換えられ、エンジンに手が入っていない個体は、多少高くても買う価値があります。この世代は、車両価格の差より、購入後にかかる金額の差のほうが大きいからです。
逆に、ここは安心していい

WRX STI – VAB【最後の「EJ」を積んだ、終着点のSTI】
スバルWRX STI最終世代となるVAB型。なぜEJ20は延命され続けたのか。最後の純粋なSTIが背負った意味と、終わらせた理由を読み解きます。
維持費の目安も持っておきましょう。2.0Lターボの四輪駆動で、自動車税は3万9500円の区分。実燃費は街乗りで7〜9km/L程度、ハイオク指定です。タイヤは18インチで、4本交換すればまとまった額になります。
加えて、この車はブレーキとタイヤの消耗が速い。踏める車ほど、消耗品の交換周期は短くなります。車両価格の安さより、年間の維持費で判断してください。
駆動系の素性。 DCCDを含むAWDシステムと6速MTは、この車の核であり、素の状態で酷使に耐える設計です。オイル管理をしていれば、走行距離が伸びても大きく崩れる部分ではありません。
部品供給。 STIとして販売された台数が多く、社外パーツも豊富です。同世代のインプレッサ(GH/GR系)と共通する部品も多いため、消耗品で困る場面は少ないでしょう。
素性のよさが残っている個体は、直せば戻る。 ボディ剛性やサスペンションの設計が素直なので、ブッシュやダンパーをリフレッシュすると走りが明確に若返ります。20万km級でも、手を入れる価値のある車です。
現車確認で見るべきポイント

インプレッサ – GC8【WRCが育てた、スバルの戦闘機】
スバルが世界ラリー選手権で勝つために磨き続けたGC8型インプレッサWRX。その開発背景と進化の意味を、時代の文脈から読み解きます。
試乗では、必ず直線でフル加速までは踏まないまでも、3000rpm付近まで回してみてください。ブーストの立ち上がりに段付きがないか、白煙が出ないか、そして異音がないか。アイドリングだけでは、ターボ車の状態は分かりません。
- 型(年式):A型か、B型以降か。A型なら、エンジンに手が入っているかの記録
- エンジン始動時:冷間で異音がないか、白煙が出ないか
- エンジンルーム:パワステポンプ周辺、カムカバー、オイルポンプ付近の滲み
- 警告灯:二次エア関連のチェックランプ履歴
- 冷却系:リザーバータンクの液量と色、ラジエター上下の漏れ跡
- 改造履歴:ECU、ブースト圧、タービン。書き換え履歴は必ず口頭で確認する
- 記録簿:オイル交換の頻度が最重要。ターボ車で記録の無い個体は避ける
この車に手を出してよい人、やめた方がよい人

BRZ – ZC6【スバルが自分の名前で出した、トヨタとの共作FR】
トヨタ86との共同開発で生まれた初代BRZ(ZC6)。水平対向エンジンをFRに積むという異例の構成が、なぜスバルの手で実現したのかを読み解きます。
向いている人は、EJ20という運命の決まったエンジンを、いま体験しておきたい人です。2019年のファイナルエディションで四半世紀の歴史が終わったこのエンジンを、日常的に回せる機会はこれから確実に減っていきます。整備を織り込んで所有できるなら、価格以上の満足があります。
やめた方がよい人は、維持費を抑えたい人です。ターボ+AWDは消耗が早く、タイヤもブレーキもオイルも一般的なセダンの比ではありません。壊れたときの金額も大きい。「安くなったスポーツセダン」として選ぶには、リスクの読みが難しい世代です。
結局、GRB/GVBの中古は買いなのか

BRZ – ZD8【AWDの会社が育てた、FRスポーツのもう一つの正解】
トヨタとの共同開発で生まれた二代目BRZ・ZD8。初代の反省を踏まえ、スバルが「自分たちのFRスポーツ」として再定義した背景と、その進化の中身を読み解きます。
記録簿があり、エンジンがノーマルで、B型以降。 この条件なら買いです。GRB/GVBは、EJ20の完成度が最も高い時期の車で、しかもDCCDを含む駆動系はいまでも十分に通用します。
逆に、A型で記録が不明、あるいはECUに手が入った個体は、安くても避けてください。この世代で最も高いのは車両価格ではなく、エンジンを載せ替える費用です。
この記事を共有

この記事を書いた人
hodzilla51
クルマの系譜を追っていたら、いつの間にかサイトになっていました




