1.6Lの自然吸気で136馬力、車重は6MT車で1050kg(2013年7月のマイナーチェンジ以降は1040kg)。ZC32Sは、スイフトスポーツが過給機に頼る前の、最後の世代です。
いま中古市場では、状態にもよりますが40万円台から150万円台あたりで流通しています。後継のZC33Sより一段安く、それでいて「回して走らせる」という部分では別物の面白さがある。ここに価値を感じる人にとっては、いまが狙い目の世代です。
ただ、2011年12月から2016年まで作られた車なので、いちばん新しい個体でも10年落ちに近づいています。しかもこの車、競技のベース車両として長く使われてきました。中古で買うなら、押さえておくべき点がはっきりあります。
CVT車は、まず「保証が切れている」ことを知っておく

ZC32SにはCVT車が存在し、中古市場でもそれなりの数が流通しています。そしてこのCVTには、スズキが保証期間の延長対策を出した経緯があります。
対象は平成23年12月6日から平成24年11月29日までに製作されたCBA-ZC32S。マニュアルモードでの変速など、変速比が急に変わる運転を繰り返すと、駆動用プーリの変速比を変えるための油圧機構の受圧部が摩耗し、狙った変速比に変速できず加速不良になる、という内容です。対策としてCVTユニットを無償交換し、保証期間は「5年または10万km」から「新車登録日から10年」へ延長されました。
問題はここからです。この延長された保証は、2012年に登録された個体ならすでに2022年で満了しています。 つまり今から中古で買う場合、同じ症状が出ても自腹になります。CVTはベルトやプーリに異常が出るとユニットごとの交換になり、修理費は一気に跳ね上がります。
だからCVT車を検討するなら、対策済みかどうかの記録を必ず確認してください。整備手帳やディーラーの入庫履歴で、CVTユニットが交換されているかどうかが分かります。交換済みであれば、その分だけ安心して買える個体です。
なお、この車を「6速MTを積むことを前提に、ホイールベースとフロントオーバーハングを先代より伸ばした」と開発者が語っている経緯もあります。予算と用途が許すなら、6MTを選ぶのが素直です。
前期と後期の区別も覚えておくと選びやすくなります。2013年7月のマイナーチェンジで内外装に手が入り、6MT車の車重は1050kgから1040kgへと10kg軽くなりました。走りの差として体感できる幅ではありませんが、装備と程度で迷ったときの判断材料にはなります。
中古で出やすい不具合を整理する

ステアリングまわりの異音とガタ。 走行中、細かい段差でフロントの足まわりから「コトコト」という音が出る個体があります。整備の現場では、ステアリングラック本体にガタが出ていてラックごと交換した、という事例が報告されています。ブッシュやリンクの劣化と区別がつきにくい音なので、試乗で気づいたら原因の切り分けを販売店に依頼してください。
アイドリングの不調とエンスト。 オーナーコミュニティのトラブル相談では、アイドリングが安定しない、CVT車で走行中にエンストする、同じアクセル開度でも吹け方が変わる、といった相談が繰り返し出てきます。原因は個体差が大きく、スロットルボディやセンサー類の汚れ・劣化から、燃料系、電装まで幅があります。10年落ちの車として当然のメンテナンス範囲ではありますが、試乗時に暖機後のアイドリングが安定しているかは見ておきたいところです。
ステアリングスイッチの不具合。 オーディオを操作するステアリングスイッチが効かなくなるという報告があります。走行に支障はありませんが、直そうとするとスイッチ一式の交換になりがちです。
ブレーキブースターまわり。 踏力の増幅が効きにくくなる、ペダルの感触が変わるという相談も見られます。ブレーキは命に直結する部分なので、試乗でペダルの踏み応えに違和感があれば深追いしてください。
塗装と内装のくたびれ。 スズキ車全般で言われることですが、塗装は決して厚い部類ではありません。飛び石や擦れで想像より広く剥がれることがあります。内装も、10年選手として見ればステアリングの表皮やシートのサイドサポートに使用感が出ているのが普通です。
ちなみに、2025年に届け出があったスイフトスポーツの燃料ポンプのリコールは、対象はZC33Sのみです。ZC32Sは含まれていません。年式が近い話として混同されがちなので、覚えておくと販売店との話が早いです。
逆に、ここは安心していい

スイフトスポーツ – ZC33S【ターボ化という決断が変えたすべて】
4代目スイフトスポーツ ZC33Sは、シリーズ初のターボエンジンを搭載し、軽量ボディと価格破壊的なコストパフォーマンスで登場した。なぜスズキはNAを捨てたのか、その背景と意味を読み解く。
M16Aエンジンそのもの。 自然吸気の1.6Lで、136馬力を6900rpmで発生させる高回転型ですが、過給機を持たないぶん熱と圧力のマージンには余裕があります。ターボ車のように「ブーストを上げた履歴が内部にダメージを残している」という心配がありません。オイル管理さえまともなら、距離が伸びていても素性は崩れにくいユニットです。
部品供給。 販売台数が多く、競技ベースとしても長く使われてきたため、社外パーツも中古部品も流通量が豊富です。同世代のスイフト(ZC72S系)と共通の部品も多く、消耗品で困る場面は少ないでしょう。
維持費。 1.6Lで車重1トン台前半なので、自動車税も重量税も安い部類です。タイヤも195/45R17と、スポーツモデルとしては現実的なサイズ。燃費もJC08モードで15km/L台と、日常使いで負担になる数字ではありません。
ボディの素性。 ベースとなった3代目スイフトは、欧州での評価を意識して構造接着剤の適用範囲を広げ、スポット溶接の打点を増やしています。走行距離が伸びてもボディがヤレにくく、足まわりをリフレッシュすれば走りが戻りやすい車です。
前オーナーの使い方をどう見抜くか

カルタス GT-i - AF33S【羊の皮をかぶったS製ホットハッチの原点】
「軽だけではもう伸びない」 創業以来、軽自動車のみを作ってきたスズキでしたが、当時の経営陣は大きな意思決定を強いられていました。 1970年代末、衝突規制強化により軽規格は技術的なコストが上がっており、他社と比べてシェア […
ZC32Sで最も重要なのは、実はここです。この車はジムカーナやダートトライアル、ラリーのベース車両として定番でした。中古市場には、競技で使われた個体や、その後ナンバーを戻された個体が確実に混ざっています。
見分ける手がかりはいくつかあります。ロールバーの取り付け跡、牽引フックの追加、室内の遮音材が抜かれた形跡、社外の全塗装、そして年式に対して不自然に新しい足まわりやクラッチ。ボンネット裏やトランク内側、シートレールの取り付け部など、内装を戻しても消えにくい場所を見てください。
もうひとつ、社外パーツ満載で純正部品が付属しない個体には注意が必要です。車検や修理のたびに純正戻しを求められる場面があり、10年落ちの車では純正外装部品が見つからないこともあります。
現車確認で見るべきポイント

スイフトスポーツ – HT81S【固まる前に生まれた最初のスイスポ】
型式 TA-HT81S 生産期間 2003年6月〜2005年 エンジン M15A 水冷直列4気筒 DOHC 16バルブ 排気量 1,490cc 最高出力 115PS(85kW)/6,400rpm 最大トルク 143N・m […
まず、暖機後のアイドリング。エアコンを入れた状態でも回転が安定しているか、不規則に上下しないかを見ます。
次に、低速での据え切りと段差。ハンドルを左右に切ったときの引っかかり、細かい段差でのコトコト音。ステアリングラックや足まわりのガタは、ここでほぼ出ます。
ブレーキペダルの感触。踏み込んだときのタッチが海綿状でないか、踏力に対して素直に効くか。
CVT車なら変速の滑らかさ。加速中に回転だけ上がって速度が乗ってこない、変速のたびにショックが出る、といった症状は要警戒です。あわせて、CVTユニットの交換記録が整備手帳にあるかを確認してください。
競技使用の痕跡。ボンネット裏、トランク内、シートレール周辺、ロールバーの取り付け穴。
塗装。バンパーとフェンダーの境目、ドアミラー周辺、リアゲート下部。
この車に手を出してよい人、やめた方がよい人

アルトワークス – HA36S【15年の沈黙を破って帰ってきた軽ホットハッチ】
2015年に復活したアルトワークスHA36S。15年ぶりの復活はなぜ実現し、何が変わり、何が変わらなかったのか。軽スポーツの文脈でその意味を読み解きます。
向いている人は、自然吸気の高回転を自分で使い切りたい人です。ZC32Sの136馬力は、いまの基準では速さの絶対値として突出していません。けれど6900rpmまで回して初めて全部出る、という性格は、過給機付きの車では味わえないものです。踏んだぶんだけ返ってくる関係を楽しめる人には、いまの価格帯で買える最良の選択肢のひとつです。
自分で整備をする人、あるいは付き合いのある整備工場がある人にも向いています。10年落ちの車として消耗品の交換は避けられませんが、部品は手に入りやすく、構造も素直です。
やめた方がよい人は、買ってすぐノートラブルで乗り続けたい人です。年式なりの手入れは必要で、足まわりのブッシュやマウント、消耗品には出費が要ります。CVT車で、しかも交換記録が確認できない個体を予算ギリギリで買うのは、いちばん危ない買い方です。
「速い車が欲しい」だけであれば、素直にZC33Sを検討したほうが幸せかもしれません。1.4Lターボの厚いトルクは、日常域での速さという点でZC32Sを明確に上回ります。
結局、ZC32Sの中古は買いなのか

ジムニー – JB64【20年ぶりの全面刷新が証明した「変えない」という戦略】
2018年に20年ぶりのフルモデルチェンジを果たしたJB64型ジムニー。なぜこれほど長く待たされ、なぜこれほど支持されたのか。変わったこと、変えなかったことの意味を読み解きます。
条件付きで買いです。
6MTで、競技使用の痕跡がなく、整備記録が残っている個体。この条件を満たすなら、いまの相場は割安だと思います。エンジンは素性が良く、部品も手に入り、維持費も安い。「回して走らせる楽しさ」を、100万円前後で買えるクルマは多くありません。
逆に、CVT車で交換記録が不明、あるいは競技上がりが疑われる個体は、価格が安くても避けたほうが無難です。ZC32Sはタマ数が比較的あるので、焦って妥協する必要はありません。
過給機を持たないスイフトスポーツは、この世代で終わりました。「最後のNAスイスポ」という肩書きは、時間が経つほど重くなっていきます。
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この記事を書いた人
hodzilla51
クルマの系譜を追っていたら、いつの間にかサイトになっていました

