ロードスターとは
ロードスターは、他社が全部やめた形式を、35年間ひとりで作り続けているクルマです。
1989年のNA6Cが世に出た当時、小さくて軽い2人乗りオープンという商品はほぼ絶滅していました。イギリスのメーカーが作っていた市場は、安全基準と収益性の前に消えています。そこへマツダは、1.6Lのエンジンを前に置き、後輪を駆動し、幌を手で開ける、装備の乏しいクルマを持ち込みました。速さの数字では何一つ勝てません。それでも売れたのは、運転そのものが目的になる乗り物を、当時の誰も供給していなかったからです。
1998年のNB6C/NB8Cは、その方向をそのまま磨いた世代でした。リトラクタブルヘッドライトは安全基準の関係でやめましたが、車重も大きさもほとんど変えていません。無邪気さを保ったまま、細部の完成度だけを上げています。
2005年のNC1で、初めて路線が揺れます。衝突安全と快適性の要求に応えるため、車体は明確に大きく重くなりました。それでも電動格納式ハードトップを用意し、乗り味の素直さは残しています。大きくなったのは、この形式を絶やさないための代償でした。
2015年のND5RCでは、その代償を返しにいきます。徹底した軽量化で初代に近い重量へ戻し、全長も短くしました。排気量はむしろ小さくなり、1.5Lが基本。数字を追わずに、運転する人が主役でいられる状態を作り直したわけです。
NAからNDまで、4世代。累計生産台数は100万台を超え、2人乗り小型オープンとして世界で最も多く作られたクルマになりました。ロードスターの歴史は、「誰も作らなくなったもの」を作り続けると何が起きるかという、35年分の答えです。




