プリウスとは
プリウスは、無謀と言われた技術を25年かけて当たり前にしたクルマです。
1997年のNHW10は、はっきり言って早すぎました。エンジンとモーターを組み合わせて走る量産車など前例がなく、電池の寿命も、コストも、修理体制も、何ひとつ確立していません。それでもトヨタは「21世紀に間に合いました」という言葉とともに市場へ出します。採算は合っていなかったと言われますが、実際に売って走らせない限り、この技術は育たなかったはずです。
2003年のNHW20で、プリウスは特別なクルマであることをやめます。5ドアハッチバックの実用的な形になり、動力性能も普通のセダンと遜色ない水準に到達しました。北米で受け入れられたのもこの世代からで、ハイブリッドは「変わり者の選択」ではなくなります。
2009年のZVW30は、その延長で一気に普及しました。価格を抑えたグレードを用意し、燃費の数字が分かりやすく効いた結果、日本の販売台数で長く首位を占め続けます。街のどこを見てもプリウスがいる、という光景はこの世代が作りました。
そこで新しい問題が生まれます。売れすぎたことで、プリウスは「燃費だけのクルマ」という記号になってしまったのです。2015年のZVW50が造形で強く自己主張したのは、その記号から抜け出そうとした結果でした。評価は割れましたが、意図ははっきりしています。
2023年のMXWH60は、その課題に別の角度から答えました。空力を優先した低い姿勢と、明確に速くなった動力性能。燃費で選ばれるのではなく、格好とドライブフィールで選ばれるハイブリッドへ性格を移したわけです。
NHW10からMXWH60まで、5世代。プリウスの歴史は、新しい技術が「特別なもの」から「当たり前」になり、その先で改めて魅力を問われるまでの全過程の記録です。





