トヨタMR-Sとは
エンジンを運転席の後ろに積む構成は、レーシングカーの理屈です。それを大衆車メーカーが3世代も市販し続けた例は、そう多くありません。
1984年のAW11、MR2が最初でした。カローラ系の部品を流用しながら、エンジンを横向きに車体中央へ移すという構成です。専用設計の高価なスポーツカーではなく、量産部品でミッドシップを成立させたことに意味があります。1.6LのDOHC、4A-GE型を積み、後にスーパーチャージャーも加わりました。
1989年のSW20では、性格が大きく変わります。排気量は2.0Lへ、ターボ仕様の3S-GTE型は最終的に245PSに達しました。車体も大きくなり、本格的なスポーツカーとしての速さを求めた世代です。初期型は限界域の挙動が難しいと言われ、そのたびに改良が重ねられました。トヨタがこの構成を真面目に育てようとしていた証拠です。
1999年のZZW30、MR-Sで方向が反転します。ターボをやめ、屋根を取り、車重を1トン切りまで削る。速さの数字ではなく、軽さと素直さで運転を楽しませる方向へ振り切りました。シーケンシャルMTという当時としては新しい変速機も選べます。2007年、この系譜は途絶えました。
AW11からZZW30まで、3世代。トヨタのミッドシップの歴史は、量産メーカーがどこまで趣味の構成に付き合えるかという実験の記録です。



