ホンダS660とは
ホンダの四輪の原点は、実用車ではなく小さな2人乗りオープンでした。
1962年のSPORTS 360は、鈴鹿で発表されながら市販されずに終わります。それでもこの車の存在は重要です。二輪メーカーだったホンダが四輪へ出ていくとき、最初に見せたのがトラックでもセダンでもなく、軽自動車枠のスポーツカーだったからです。
実際に売られたのは1963年のS500でした。531ccの直列4気筒DOHCで44PS、8000rpmまで回るエンジンを、後輪へチェーンで伝える。二輪で培った高回転技術を、そのまま四輪に持ち込んだ構成です。排気量あたりの出力は当時の常識を大きく超えていました。
続くS600、そしてS800で排気量を広げ、輸出にも本格的に乗り出します。小さくて速い、そして精密に回る。この時期に作られたホンダらしさの定義は、その後も何度も参照されることになります。
その血が軽自動車の枠へ戻ってきたのが1991年のPP1、ビートでした。エンジンを運転席の後ろへ置くミッドシップで、自然吸気の660ccを8100rpmまで回す。バブル期のホンダだからできた、採算度外視の遊びです。
そして2015年のJW5、S660。同じくミッドシップの軽オープンで、こちらはターボと6速MTを組み合わせています。速さの絶対値は限られていても、車体が小さいぶん、扱いきれる楽しさは濃い。2022年の生産終了時には、大量の受注が短時間で埋まりました。
SPORTS 360からS660まで。この系譜は、ホンダという会社がいちばん機嫌のいいときに何を作るのかを示す記録です。





