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NissanフェアレディZ

フェアレディZ – RZ34【「らしさ」を携えた不死鳥Z】

  • hodzilla51
  • 9分で系譜を理解
フェアレディZ – RZ34【「らしさ」を携えた不死鳥Z】

フェアレディZが帰ってきた。

しかも、ほとんどの人が「もう次はないだろう」と思っていたタイミングで。

2022年に発売された7代目・RZ34は、先代Z34の登場から実に12年以上を経ての刷新です。

この長すぎるブランクそのものが、このクルマの成り立ちを理解するうえで最大のヒントになります。

12年の空白が意味すること

先代のZ34が登場したのは2008年。

リーマンショックの直前というタイミングでした。その後、日産はEVシフトの旗手としてリーフを世に送り出し、経営資源はグローバル販売台数の拡大と電動化に注がれていきます。

カルロス・ゴーン体制のもとで、スポーツカーの優先順位が下がったのは想像に難くありません。

Z34はマイナーチェンジを重ねつつ、北米市場では「370Z」として一定の存在感を保っていました。ただ、プラットフォームもエンジンも基本設計は2000年代のまま。2010年代後半には、さすがに商品力の限界が見えていたのも事実です。

つまりRZ34は、「作りたくても作れなかった時代」を経て、ようやく実現にこぎつけたモデルです。

日産の経営が混乱を極めた2018〜2019年を越え、新体制のもとで「Zを絶やさない」という判断がなされた。その背景には、北米でのブランドイメージ維持という極めて現実的な理由がありました。

新しいのに、懐かしい理由

RZ34のデザインを初めて見たとき、多くの人が「S30っぽい」と感じたはずです。

丸みを帯びたヘッドライト、ロングノーズ・ショートデッキのシルエット、リアの処理にはZ32の面影もある。

これは偶然ではなく、明確な意図のもとに設計されたものです。

チーフデザイナーの入江慎一郎氏は、歴代Zのアイコンを現代の文法で再構成するというアプローチを取ったと語っています。単なるレトロデザインではなく、「Zらしさとは何か」を分解し、それを新しいプロポーションの中に組み直す作業だったわけです。

この手法は、ポルシェが911で長年やってきたことに近いとも言えます。ただし日産の場合、Zは世代ごとにデザインの方向性がかなり変わってきた歴史があります。S30、S130、Z31、Z32、Z33、Z34と、統一されたデザインDNAがあったかというと正直怪しい。だからこそRZ34では、あえて初代に立ち返ることで「Zの原点」を再定義しようとした。これはデザイン上の判断であると同時に、ブランド戦略上の判断でもあります。

VR30DDTTという選択

パワートレインの核は、3.0リッターV6ツインターボのVR30DDTT。これはインフィニティQ50やQ60にも搭載されているユニットで、RZ34では最高出力405PS、最大トルク475N・mを発生します。先代Z34のVQ37VHRが336PSだったことを考えると、数字上の飛躍はかなりのものです。

ここで重要なのは、日産があえて新規開発のエンジンを用意しなかったという点です。VR30DDTTは既存のユニットであり、プラットフォームもZ34のFMプラットフォームを改良したものがベースになっています。つまりRZ34は、完全な新設計ではなく、既存資産の高度な再構築によって成立したクルマです。

これを「手抜き」と見るか「合理的判断」と見るかで、評価は分かれます。ただ、現実問題として、年間数万台規模のスポーツカーのためにゼロからプラットフォームとエンジンを新造するのは、今の日産の経営体力では現実的ではなかった。むしろ、既存の資産をうまく使うことで「Zを存続させる」という判断を下したこと自体に意味があります。

結果として、VR30DDTTの出力特性はZの性格によく合っています。低回転から太いトルクが立ち上がり、高回転まで気持ちよく回る。ターボのレスポンスも先代のNAほどダイレクトではないにせよ、日常域での扱いやすさは明らかに上です。

6速MTを残した意志

RZ34のトランスミッションは、6速MTと9速ATの2本立てです。9速ATはメルセデス・ベンツとの協業で得たユニットで、先代の7速ATから段数も制御も大幅に進化しました。ただ、このクルマの存在意義を語るうえで外せないのは、MTが残されたという事実のほうです。

2020年代のスポーツカー市場において、MTの設定はもはや当たり前ではありません。トヨタGRスープラも当初はATのみでスタートし、MTは後から追加されました。ポルシェですら、GT3以外のモデルではPDKが主流です。そんな中で、日産がZの新型に最初からMTを用意したのは、「Zとはそういうクルマだ」という宣言にほかなりません。

田村宏志チーフ・プロダクト・スペシャリストは、開発にあたって「Zはドライバーが主役であるべき」という考えを繰り返し語っていました。MTの存続は、その思想の最もわかりやすい表現です。効率や速さだけを追えばATに軍配が上がる時代に、あえて「操る楽しさ」を選択肢として残した。

GRスープラという存在

RZ34の立ち位置を理解するには、同時代の競合を無視するわけにはいきません。最大のライバルは、言うまでもなくトヨタ・GRスープラ(A90)です。

スープラはBMW Z4とプラットフォームを共有し、直列6気筒ターボのB58エンジンを搭載するという、ある意味で割り切った成り立ちのクルマでした。走りの完成度は高い。ただ、「トヨタが作ったクルマなのか、BMWが作ったクルマなのか」というアイデンティティの議論がずっとつきまとっていたのも事実です。

対するRZ34は、エンジンもプラットフォームも日産の内製です。借り物ではない。この「自前であること」は、スペックシートには現れないけれど、Zというブランドの純度を保つうえでは決定的に重要なポイントでした。日産のファンがRZ34に感じる安心感の根っこは、おそらくここにあります。

一方で、シャシーの洗練度やボディ剛性の絶対値では、新設計のスープラに分がある場面もあります。RZ34は改良型プラットフォームゆえの限界を、セッティングの妙で補っている部分がある。このあたりは、試乗した多くのジャーナリストが指摘しているところです。

価格と入手性という現実

RZ34の日本での発売は2022年8月。

価格は524万円からと発表されました。先代Z34の末期が約400万円台だったことを考えると上昇していますが、400PS超のFRスポーツとしては依然として戦略的な価格設定です。GRスープラの6気筒モデルが700万円台であることを考えれば、なおさらです。

ただし、発売直後から深刻な納車待ちが発生しました。半導体不足やサプライチェーンの混乱に加え、想定以上の受注が重なった結果、一時は新規注文の受付が停止される事態にまでなっています。「買えるけど届かない」という状況は、クルマの商品力とは別の次元でユーザーのフラストレーションを生みました。

この供給問題は、RZ34が少量生産モデルであるがゆえの構造的な課題でもあります。栃木工場のラインで、GT-Rと並んで生産されるZの台数には物理的な上限がある。

日産としても、Zの生産を急拡大するインセンティブは薄い。スポーツカーとはそういうビジネスです。

「存続させた」という最大の功績

RZ34を冷静に見れば、完全新設計ではないこと、プラットフォームが旧世代の改良であること、電動化の要素がまったくないことなど、「次の時代」を見据えた設計とは言いがたい部分もあります。

でも、それでいいのだと思います。このクルマの最大の価値は、「FRスポーツカーとしてのZを、2020年代にちゃんと存在させた」ということそのものにあるからです。

日産がZを終わらせなかったこと。V6ツインターボとMTという組み合わせを、電動化の波の中で世に出したこと。

歴代のデザインを引用しながら、新しいZの顔をつくったこと。どれも、やらなくても済んだ選択です。それをあえてやった。

RZ34は、おそらく内燃機関だけで走る最後のフェアレディZになるかもしれません。

だとすれば、このクルマは「終わり」ではなく、「純粋なガソリンスポーツカーとしてのZの集大成」として記憶されるべき一台です。

50年以上続いてきたZの系譜が、ここでひとつの到達点を迎えた。そう考えると、12年待った甲斐はあったのではないでしょうか。

Zの系譜

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