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AMG A45 S、£68kのFinal Editionで幕引き。世界最強直4ホットハッチが示すダウンサイジングの終着点

AMG A45 S、£68kのFinal Editionで幕引き。世界最強直4ホットハッチが示すダウンサイジングの終着点

Source: autocar.co.uk(報道用画像)

世界最強の直4が、静かに退場します

メルセデスAMGが、A45 Sを「Final Edition」で締めくくると発表しました。2019年のデビューから7年、コンパクトなAクラスの車体に量産車として世界最強の4気筒エンジンを押し込んだこのホットハッチが、いよいよ退場します。英国価格は67,965ポンドから。ただしメルセデスは、英国への導入台数については明言していません。

Final Editionの中身はメカニカルには据え置きです。M139型2.0リッター直4ターボは416bhp・369lb-ft(500Nm)を発生し、0-62mph(0-100km/h)を3.9秒、最高速は電子リミッターで168mph(270km/h)。数字だけ見れば、生粋のスポーツカーと張り合えるレベルです。この出力を、8速デュアルクラッチと後輪の可変トルク配分を備えた四駆で路面に伝えます。要するに、最後まで中身は「怪物」のままでした。

変わったのは見た目だけ、という潔さ

Final Editionの装いは、メルセデスのレースカーから着想を得たもの。マニュファクトゥーアのカラーパレットから選ばれたマットの「マウンテングレー マグノ」に、黒のドアハンドル、マットの19インチホイール、黒のブレーキキャリパーと組み合わせます。ミラーキャップやクアッドの排気口、リアバッジまで黒で統一し、そこにイエローのアクセントとシルバークロームの給油口キャップでコントラストを付けています。

さらにAMGエアロダイナミクスパッケージを標準装備し、より攻めたフロントスプリッター、大型リアスポイラー、フロントカナード、光沢ブラックのディフューザーを追加。レースのゼッケンを模した大きな「45 S」ロゴが内外に散りばめられ、これがただのAクラスではないことを主張します。数年前の「リミテッドエディション」とよく似た手法ですが、あのジョンディア風の派手なリバリーは今回ありません。

なぜ消えるのか──Euro 7というハードル

Autocarは昨年、M139の最高出力版が新しいEuro 7排ガス基準に適合せず、対応させるための再設計に多額のコストがかかると報じていました。メルセデスはこの件についてコメントを避けています。理由がどうあれ、欧州で選べるホットハッチのリストがまた一つ短くなったのは確かです。

興味深いのは、退場するのが最強版だけだという点です。316bhpの下位グレードAMG A35は当面併売され、価格は48,030ポンド。つまり今回消えるのは「一線を越えたハイパフォーマンス版」であって、AMGのコンパクトそのものが即消滅するわけではありません。ここにAMGのエンジン戦略の現在地がにじんでいます。

ダウンサイジングの終着点、そして揺り戻し

A45 Sは、AMGが押し進めた4気筒ダウンサイジングの到達点でした。「小さな排気量から最大限の性能を絞り出す」という思想を、量産直4としては世界最強という形で体現したのがこの車です。ちなみにこのM139は、縦置きに載せ替えられ469bhpに強化された不遇のAMG C63にも使われています。1台のダウンサイジング直4が、ホットハッチからミドルセダンまでを担っていたわけです。

ところが、その路線は今まさに転換点を迎えています。報道によれば、高出力版M139を使うほかのAMGモデルは、直列6気筒を積むモデルへ置き換えられていく見込み。さらにAMGは新型V8エンジンを年内に投入するとも伝えられており、「小さくして過給で稼ぐ」から「気筒数を戻す」方向への揺り戻しが起きています。A45 Sの退場は、単なる一車種の終売ではなく、AMGがダウンサイジング一辺倒から舵を切ったことの象徴と読めます。

後継はおそらく電動、そして未知数

Aクラスそのものは、新型CLAと同じMMAプラットフォームを用いる第5世代が2028年に控えています。AMGはすでにこのプラットフォーム由来のモデルとして、671bhpのトライモーターEVを公開済み。新型AMG CLA 45は完全電動で、AMGはここに「これまでのホットハッチ購入層を電動へ引き込む」という狙いを込めています。

言い換えれば、内燃機関のAMG Aクラス後継が出るかどうかは、現時点では未知数です。厳しさを増す排ガス規制を考えると、期待しすぎないほうが賢明でしょう。世界最強の直4ホットハッチという肩書きは、おそらく二度と量産車には戻ってきません。だからこそ、この矢面に立った最後の1台は、系譜のうえで小さくない意味を持つはずです。

小鍛治康人(やすと)

この記事を書いた人

hodzilla51

クルマの系譜を追っていたら、いつの間にかサイトになっていました