ニュース一覧に戻る

ジープ欧州刷新、最上位SUVは中国Dongfeng共同開発という現実

ジープ欧州刷新、最上位SUVは中国Dongfeng共同開発という現実

Source: motor1.com(報道用画像)

米国の象徴が、欧州の頂点に「中国生まれ」を据える

ジープが2030年に向けて欧州ラインアップを大きく組み替えます。Stellantis傘下のジープ欧州部門トップ、ファビオ・カトーネ氏が明かしたところによると、今後4年で3車種を投入し、既存のアベンジャー(Avenger)とコンパス(Compass)と合わせて販売を伸ばす計画です。

3台の内訳は、欧州専用に開発する2つのBセグメントSUVと、もう1つが中国のDongfeng(東風)と共同開発する中型(Dセグメント)SUV。この中型SUVが事実上、欧州ジープの上位を担う存在になります。要するに、アメリカの大地を走るために生まれたブランドの「欧州での旗艦」が、中国で開発・生産される車になるということです。

速報としては「新型3車種」で終わる話かもしれません。ただ、ここで見るべきは車種の数ではなく、ジープというブランドの重心がどこへ動いているか、です。

欧州ジープは「米国の輸入版」をやめる

これまでジープの欧州戦略は、米国本国のコアレンジを持ち込み、そこにアベンジャーのような地域専用車を時々足す、という形でした。ところが今回の刷新では、ほぼ専用ラインアップへと舵を切ります。Autocarの指摘では、米国でも売られる車はコンパスだけになる可能性すらあるといいます。

つまり、欧州で売られるジープの大半が、米国のジープとは別物になっていく。「グローバルブランド」を名乗りながら、実態は地域ごとに中身がバラバラになっていく構図です。カトーネ氏自身も「製品の方程式は世界共通だが、我々は強力な地域ツールを持つグローバル企業であり、欧州顧客のニーズに強く寄せたラインアップを開発している」と語っています。

この「地域最適化」は商売としては合理的です。ただ、ジープの価値はもともと「世界中どこでも同じ顔をした本物のオフローダー」という一貫性にありました。地域ごとに別物化していくほど、その一貫性は薄れていく。ここに系譜希薄化のリスクが潜みます。

2つのBセグメントSUV:アベンジャーの上を埋める

新型の小型2台は、いずれもアベンジャーの上に位置します。社内では「B-SUVコンパクト」「B-SUVラージ」と呼ばれており、全長4.10mのアベンジャーに対し、4.2m前後とわずかに大きくなる見込みです。

カトーネ氏によれば、コンパクトは「より幅広く、ずっとSUVらしい」性格に、ラージはCセグメントに近いサイズでコンパスのすぐ下に収まるとのこと。両車ともStellantisの新しいSTLAプラットフォームを使い、欧州で生産されます。内燃機関、フルハイブリッド、フルEVに対応するマルチエネルギー設計です。

車名は未確定ですが、2025年末に消えたレネゲード(Renegade)の名が復活する可能性も挙がっています。なお欧州では、ラングラー(Wrangler)が安全・排出ガス規制対応の難しさから2026年末で撤退し、その穴を2027年初頭登場予定の電動オフローダー、リーコン(Recon)が埋める段取りになっています。

核心はDongfeng共同開発の中型SUV

そして本題が、Dongfengと共同開発する中型SUVです。生産地として唯一はっきり確定しているのが、この中型SUVが中国製になるという点。ジープはすでに「中国で開発・生産し、国内および世界市場に供給する新型車」を進めると認めており、今回のプロジェクトはその路線をさらに裏打ちしています。

ジープ側は防戦するように、「プラットフォームを共有しても、これは本物のジープ製品だ」「社内デザイン・社内エンジニアリングで、リバッジ車ではない」と強調しています。逆に言えば、わざわざそう念押ししなければならないほど、「中国製ジープ」への抵抗感を本社が意識しているということでもあります。

かつてジープがチェロキー(Cherokee)で築いてきた「タフで実用的なオフローダー」という像は、北米の風土と切り離せないものでした。その系譜についてはXJ型チェロキーの系譜で詳しく触れていますが、その文脈に立つほど、欧州ジープの上位が中国開発車になるという今回の事実の重さが見えてきます。

これはジープの話であり、Stellantisの話でもある

STLAというマルチエネルギー基盤への全面依存は、Stellantisが「専門性より柔軟性」を選んだことを示しています。各ブランドが同じ土台を共有し、地域ごとに味付けする。効率は上がりますが、ブランド固有の物語は薄まりやすい。

Bセグメントは欧州で量を稼ぐために自前で固め、上位は中国とのパートナーシップで埋める——これがジープ欧州の新しい設計図です。小型車は欧州生産の道を探りつつ、欧州域内生産を促す「産業加速法(Industrial Acceleration Act)」案にも言及しており、生産地の綱引きはまだ続きます。

ジープが車種を揃えられるかどうかは、もはや問題ではありません。問われているのは、世界中で開発元がバラけ、中国製が頂点に立ったとき、それでも「ジープをジープたらしめる」アイデンティティが残るのか、という一点です。カトーネ氏が掲げた「能力・保護・多用途性」というデザインの柱が、看板だけで終わらないかどうか。答えが出るのは、これからの4年です。

この車種の系譜をもっと深く

チェロキー – XJ【SUVの常識を壊したモノコックの異端児】

チェロキー – XJ【SUVの常識を壊したモノコックの異端児】

系譜記事を読む
小鍛治康人(やすと)

この記事を書いた人

hodzilla51

クルマの系譜を追っていたら、いつの間にかサイトになっていました