モントレーで屋根を切った、ディアブロ・レストモッドの第二章
サンマリノを拠点とするレストモッダー、エチェントリカ(Eccentrica)が、ランボルギーニ・ディアブロをベースにしたオープンモデル「V12ロードスター」を披露しました。公開の舞台はモントレー・カーウィーク内のイベント「ザ・クエイル」で、日程は8月14日。既発のクーペ版「エチェントリカV12」に続く第二弾で、生産はクーペと同じく世界19台限定、各車オーナー個別仕様です。
スペックがまた、いかにも90年代スーパーカーの理想像をなぞっています。5.7リッターの自然吸気V12は7,000rpmで542bhp(Autocar表記、Motor1では550hp)、トルクは442〜443lb-ftを後輪へ。組み合わされるのは6速のゲート式マニュアルです。0-62mph(約100km/h)は3.8秒、最高速は208mph(約335km/h)を主張。車重は3,395ポンド(約1,540kg)とされます。つまり過給機もパドルもデュアルクラッチもない、という引き算の設計思想がここにあります。
90sの「屋根なしV12・MT」という系譜
ここで思い出したいのが、ディアブロというクルマの立ち位置です。1990年代、ランボルギーニのフラッグシップとして君臨したディアブロには、四駆のVT、過激なSV、そしてタルガトップを載せたロードスターと、複数の派生が存在しました。屋根を外したV12ミッドシップを、電子制御に頼らないゲート式マニュアルで操る──この体験そのものが、当時のスーパーカー像の核でした。オリジナルのディアブロ・ロードスターは、その「開けっ放しのV12」を体現する一台だったわけです。
エチェントリカのロードスターは、まさにこの系譜を現代の工学で焼き直そうとしています。創業者のエマヌエル・コロンビーニは「V12はわれわれの所信表明だった。ロードスターは次の章であり、より剥き出しで、より即時的で、より要求が厳しい。屋根もなければフィルターもない。あなたと機械の間に何もない」と語ります。速さの数字より先に、90sが持っていた生々しさをどう取り戻すか、という語り口です。ここが日本語の量産速報が拾いきれない角度だと思います。スペック表を並べるだけでは、なぜ「屋根なし・自然吸気V12・MT」の三点セットにこだわるのかが見えてこないからです。
屋根を落とすための再設計
もっとも、屋根を切るのは見た目ほど単純ではありません。エチェントリカによれば、ディアブロの上部を切り落とすだけでは済まず、開放されたキャビン周りの気流を管理するための専用の空力スタディを実施したとのこと。乱れた空気を乗員に叩きつけず、うまく逃がす狙いです。シャシーはスチール製スペースフレームにカーボンファイバーの補強を追加し、ボディはスチールとカーボンの組み合わせで、それでいてディアブロ固有のプロポーションは崩していません。
足まわりも現代化されています。トレッドを拡幅し、サスペンションジオメトリーを見直し、セミアクティブダンパー、油圧式ステアリング、そして最新のブレンボ製ブレーキを採用。トレッド拡幅は操縦性の向上と同時に、ディアブロらしいワイドな佇まいを一段と強調する効果も狙っているようです。内装はコノリーレザー、アルカンターラ、アノダイズド仕上げの素材、露出したカーボンで、旧車らしい味を残しつつ現代的に。1台あたり3,500点以上の専用部品が開発されるといいます。
元ランボCTOが率いる開発
説得力の裏づけになっているのが開発陣です。デザインはミラノのスタジオ、ボロメオ・デ・シルバ(Borromeo De Silva)が担当。開発を率いたのは、ランボルギーニの元最高技術責任者マウリツィオ・レッジャーニで、ムルシエラゴ、ガヤルド、アヴェンタドール、ウラカンといったモデルに関わってきた人物です。ディアブロの時代を知る文脈の上に、その後のランボV12を仕立ててきた技術者が乗る、という座組みになります。
価格はAutocarによれば100万ポンドを超える見込み。加えてドナー車の相場として、クーペで約20万ポンド、ロードスターで約50万ポンドという水準も示されています。19台という数は、現代のスーパーカーの限定基準で見てもかなり希少な部類です。過給とモーターで武装した今のハイパフォーマンス勢とは真逆の、引き算で90sの手触りを取り戻す一台。ディアブロ・ロードスターが体現していた「屋根なしV12・手動変速」という価値を、レストモッドという手法で現代に接続してみせた、と言えそうです。

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hodzilla51
クルマの系譜を追っていたら、いつの間にかサイトになっていました
