ニュース一覧に戻る

BMW『i3』が電動3シリーズへ転生 ― カーボン都市EVから受け継いだ名の系譜

BMW『i3』が電動3シリーズへ転生 ― カーボン都市EVから受け継いだ名の系譜

Source: autocar.co.uk(報道用画像)

BMWが車名『i3』を、まったく別のクルマとして復活させました。新型i3はグローバルで初の「電動3シリーズ」となるサルーンで、英国では受注を開始し、価格は5万3005ポンドから。欧州では先行する限定仕様「ファースト・エディション」が独本国で7万5340ユーロから発売され、標準モデルは今秋に6万5900ユーロ(独)で登場します。Motor1によれば、強い需要を受けてBMWは販売開始を当初予定の今秋から前倒ししました。ただし生産自体は予定通り8月にミュンヘンで始まり、ファースト・エディションは早期に注文を入れたい層への“先行枠”という位置づけです。

「i3」という名前が指すものが、根本から変わった

ここで系譜の文脈を押さえておきたいところです。初代i3は2013年に登場し、2022年に生産を終えた、カーボン製ボディをまとった奇抜な都市型EVでした。観音開きのドアと立体的なキャビン、再生素材を多用したインテリア——「3シリーズの電動版」とは似ても似つかない、独立した実験的プロダクトだったのです。

その名が今、Neue Klasse世代では「電動の3シリーズ・サルーン」として復活しました。Autocarが明記する通り、新型i3は2022年に生産を終えたあの先駆的ハッチバックから名前を受け継いでいます。同じ三文字が、都市型コミューターからミドルサルーンの本流へと意味を移したわけです。日本語の量産ニュースがスペック表だけを並べて済ませがちなのは、まさにこの“名前の転生”という縦串でしょう。

なぜ今まで「電動3シリーズ」がなかったのか

興味深いのは、BMWが2021年から電動の「i4」を売ってきたにもかかわらず、電動3シリーズの投入を遅らせてきた点です。Autocarによれば、BMWは内燃機関版に匹敵する性能を技術が満たせるようになるまで、あえて待っていたといいます。i4というサイズも形も近いEVが既にあったにもかかわらず、です。

その「待った」の答えがNeue Klasseです。新型i3はNeue Klasse世代の第2弾で、より大きなSUV「iX3」の半年後にお披露目されました。両車はEVを前提に設計された800VのGen6プラットフォームを共有します。このプラットフォームでは前席をバッテリーパックに直接ボルト留めでき、ルーフラインを可能な限り低く保てます。同じ108kWhのNMCバッテリーを積みながら、サルーンのi3がiX3より67マイルも長い567マイルという航続を実現したのは、この空力に有利なプロポーションが主因だとエンジニアは説明しています。これはMercedes-Benz EQSの新型に次ぐ、英国市場で屈指の長距離EVです。

ICEの3シリーズは消えない ― 並走する二つの系譜

注目すべきは、電動i3が出ても従来のガソリン/PHEVの3シリーズが消えるわけではないという点です。BMWはCLARベースのICE版3シリーズを継続販売し、近く第8世代に合わせてデザイン・技術両面で大幅刷新します。BMWのエンジニアはAutocarに対し、刷新後のICE版は「実質的に新型車」だと語っています。同じ「3シリーズ」の看板の下で、内燃機関と電動の二系統が並走する構図です。

i3は当初サルーンの「50 xDrive」のみで始まりますが、ツーリング(エステート)の追加が予告されています。さらに2028年には、Mプロトタイプ「M HP BEV」が予告するホットな電動M3が控え、電動パフォーマンスの「新たな基準を打ち立てる」とされます。サルーンからツーリング、そして頂点のMへ——という3シリーズらしい広がり方そのものは、G80型M3に至るこれまでのMサルーンの系譜を電動の文脈で再演していると言えます。

ファースト・エディションの中身と、これから来るもの

先行する限定仕様「ファースト・エディション(i3 50 xDrive)」は、独本国で7万5340ユーロ。Mスポーツ・パッケージと発光キドニーグリル、ヒーター付き電動調整式フロントシートを標準とし、ヒーテッド・ステアリング、リアのプライバシーガラス、3ゾーン・オートエアコン、電動トランク、ハーマンカードン、そして標準の11kWに代えて22kWのAC充電まで盛り込みます。外装6色(専用色M Le Castellet Blueを含む)、19/20インチの4種のホイールから選べます。

今秋の正式発売時には標準モデルが加わり、独で6万5900ユーロ。同等のiX3 50 xDrive(7万4700ユーロ)より約9000ユーロ安く、クロスオーバーよりサルーンが安いという序列です。今後はi3ツーリングに加え、クーペSUV的な「iX4」の追加も濃厚です。欧州ではフロントモーターを外した1モーター・後輪駆動の廉価版(iX3 40に相当する構成)が登場する可能性も指摘されています。米国への投入は来年で、その頃にはラインナップがさらに広がっているとみられます。

カーボンの都市型EVとして生まれた「i3」が、十数年を経てBMWのミドルサルーンの電動本流を名乗る——車名は同じでも、それが背負う役割は世代をまたいで書き換えられました。Neue Klasseという転換点を理解する鍵は、スペック表の数字よりも、この三文字の意味の変遷にあります。

この車種の系譜をもっと深く

BMW M3 – G80【電動化前夜、最後の直6ツインターボが吠える】

BMW M3 – G80【電動化前夜、最後の直6ツインターボが吠える】

系譜記事を読む
小鍛治康人(やすと)

この記事を書いた人

hodzilla51

クルマの系譜を追っていたら、いつの間にかサイトになっていました