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MR-Sの中古車は買い?【トヨタが最後に作ったミッドシップを、今あえて選ぶなら】

  • hodzilla51
  • 12分で読了

トヨタが最後に作ったミッドシップスポーツ、MR-S。

車重1トンを切るオープンボディに1.8リッターのNAエンジンという、今の時代にはもう出てこない組み合わせです。

パワーで勝負する車ではありません。でも、だからこそ「操る楽しさ」が濃い。そういう車に惹かれている人が、この記事を読んでいるはずです。

ただし、1999年から2007年までの生産車ですから、最も新しい個体でもすでに約20年落ち。

しかもスポーツカーとして酷使された個体が少なくありません。何が怖くて、何はそこまで怖くないのか。

ここを整理しておくことが、MR-Sの中古選びでは不可欠です。

最初に警戒すべきは「前期か後期か」と「MTかSMTか」

MR-Sの中古を選ぶうえで、まず最初に確認すべきポイントがあります。それは年式とミッションの種類です。2002年8月のマイナーチェンジを境に前期型と後期型に分かれ、この違いがトラブルリスクに直結します。

前期型は5速MT/5速SMT、後期型は6速MT/6速SMTという構成です。後期型ではボディ剛性の強化、サスペンションの見直し、リアタイヤの大径化など走りの基本が底上げされています。そしてエンジン内部のピストンリングやピストンにも順次対策が入っており、後期型、とくに2005年以降の個体はエンジントラブルのリスクが大きく下がります。

もうひとつ重要なのがミッションの選択です。MR-Sにはクラッチペダルのない「SMT(シーケンシャル・マニュアル・トランスミッション)」が設定されています。

AT限定免許で乗れるという利点がありますが、このSMTこそがMR-S最大の地雷ポイントです。

結論から言えば、可能な限りMT車を選ぶのが安全策です。理由は後述します。

重大な弱点を部位ごとに整理する

SMTの突然死。これがMR-Sで最も深刻な弱点です。走行中にいきなりギアが入らなくなる、減速時にエンジンが止まる、交差点で動けなくなる。こうした症状が、油圧ポンプやアクチュエーターの不良で発生します。しかも予兆なく起こることがあり、高速道路で発生すれば命に関わります。

修理にはポンプとアクチュエーターの交換が必要で、工賃込みで30万円前後と高額です。しかも一度直しても2〜3年で再発するという声も少なくありません。さらに現在は一部の部品が生産終了しており、修理そのものが困難になりつつあります。SMT車を選ぶなら、この覚悟は必須です。

前期型1ZZ-FEエンジンのオイル消費。

MR-Sに搭載される1.8リッターエンジン「1ZZ-FE」は、前期型においてオイルを異常に消費する個体が多く報告されています。原因はピストンリングの張力不足とピストンのオイル逃し穴の設計です。ミッドシップゆえに油温が上がりやすいMR-Sでは、他の1ZZ搭載車よりも発症リスクが高いとされています。

症状が進むとマフラーから白煙が出て、1,000kmあたり数百mlのオイルが減っていきます。放置すればエンジン内部のカーボン堆積が進み、O2センサーやエアフロメーターの故障を連鎖的に引き起こします。最終的にはエンジンのオーバーホールか載せ替えが必要になり、50万円規模の出費になることもあります。

後期型、とくに2005年以降の個体ではピストンリングやヘッドカバー内部の対策品が投入されており、リスクは大幅に低減しています。中古で前期型を買う場合は、マフラー出口の白煙チェックが最重要項目です。

純正エキゾーストマニホールドの割れ。エンジンの排気管の根元にあたる部品ですが、ミッドシップレイアウトで熱がこもりやすいMR-Sでは、この部品にクラックが入りやすいことが知られています。割れると排気漏れが起き、異音が出て車検にも通りません。

排気音がやけに大きい、エンジン付近でビリビリと振動するような音がする場合は、この割れを疑ってください。社外品のエキマニに交換されている個体では、さらに割れやすい傾向があります。修理は部品代・工賃合わせて6万円前後が目安です。

ステアリングシャフトの固着。ハンドルを回すときに途中で急に重くなったり軽くなったりする、操舵力にムラがある症状です。原因はステアリングのシャフトに使われているジョイント部分やスプライン(かみ合わせ部分)の錆による固着です。MR-Sはこの部分に水分や汚れが入りやすい構造になっており、車種固有のトラブルと言えます。

パワーステアリング本体の故障と誤診されやすいのが厄介で、丸ごと交換しても直らなかったという事例もあります。試乗時にハンドルの重さが一定かどうか、注意深く確認してください。

小さいが印象を悪くする不具合たち

サイドブレーキワイヤーの固着。リアのブレーキキャリパーにつながるサイドブレーキのワイヤーは、ゴム製のブーツが破れて内部に水が入り、錆びて動きが悪くなります。MR-Sではワイヤーが上向きにキャリパーに接続される構造のため、水が抜けにくく発症しやすいのです。

サイドブレーキが効かない、あるいは逆にリアブレーキが引きずる(常に軽くブレーキがかかった状態になる)という症状につながります。交換自体はワイヤー代が左右で約1万円程度ですが、MR-Sではワイヤーが燃料タンクの上を通っているため、タンクを降ろす必要があり、工賃がかさみます。

幌(ソフトトップ)の劣化。MR-Sの幌は手動式で構造自体はシンプルですが、20年以上経過した個体では生地の劣化が進んでいます。縫い目からの雨漏り、リアウインドウの接着部分の剥がれ、ひどいものではリアウインドウが走行中にもげるといった事例もあります。

幌の張り替えとなると20万円前後の費用がかかります。購入前に幌の状態は必ず確認し、張り替え済みの個体であればそれだけで安心材料になります。

雨漏り。幌とは別の経路でも室内に水が入ることがあります。サイドインテーク(車体横の空気取り入れ口)のドレンが詰まるパターンや、ステアリングシャフトがフレームを貫通する部分のゴムシールが劣化して水が浸入するパターンです。

運転席の足元が濡れている形跡がある個体は要注意です。水が入り続けた状態が長く続くと、フレームの錆に発展します。フレームは交換できない部品ですから、ここが錆びている個体は避けるべきです。

サブ触媒のコア崩れ。エキマニ側に付いている小さな触媒(サブ触媒)の内部が崩れて詰まることがあります。とくに前期型で発生しやすく、詰まるとパワーが出なくなります。後期型では対策されています。試乗時に高回転まで回してみて、明らかにパワー感がない場合はこの可能性を疑ってください。

補修部品の入手難。MR-Sは国内累計販売台数が約2万1千台と少なく、中古部品の流通量が極めて少ない車種です。バンパー、ヘッドライト、ドアミラー、テールランプといった外装部品の中古がほとんど出回りません。マニア人気が高いため、解体車が出てもすぐにショップや海外輸出に流れてしまうのが実情です。

つまり、ぶつけたときの修理代が想像以上にかさみます。新品部品か板金塗装に頼るしかなく、ちょっとした接触事故でも出費が大きくなりがちです。これは日常的にMR-Sを使ううえで、常に頭に入れておくべきリスクです。

逆に、ここは安心できる

弱点ばかり並べてきましたが、MR-Sには安心して評価できる部分もしっかりあります。

MT車のミッション本体は頑丈です。SMTのトラブルが目立つ一方で、通常のマニュアルトランスミッション自体は堅実な設計です。前期の5速では3速ギアの割れが稀に報告されていますが、後期の6速MTではそうした報告はほとんどありません。MTを選んでおけば、駆動系の心配は大幅に減ります。

ブレーキ、パワーステアリング、電装系の基本的な信頼性は高めです。16万km走行しても内外の電装機能、パワステ、ブレーキ、エアコンに不具合が出なかったという長期オーナーの声もあります。トヨタ車らしく、基本的な部分の作りは手堅いと言えます。

幌のシステムはシンプルで壊れにくい。手動式で電動モーターを使わない構造のため、機構そのものが故障するリスクはほぼありません。生地の劣化は避けられませんが、メカとして壊れる心配がないのは大きな安心材料です。約3秒で開閉できる軽快さも、この車の美点のひとつです。

レギュラーガソリン仕様で燃費も良好。ハイオク指定ではないため、日常の燃料コストが抑えられます。リッターあたり10〜14km程度の実燃費が期待でき、スポーツカーとしては経済的です。維持費の面で過度に身構える必要がないのは、趣味車としてありがたいポイントです。

現車確認で見るべきポイント

まず、エンジンの白煙チェック。冷間始動時にマフラーから白煙が出ていないか、走行中に加速したときミラー越しに白煙が見えないか。前期型では特に重要です。

次に、カスタムの有無と純正部品の残存。MR-Sはカスタム車両の比率が高い車種です。マフラー、エキマニ、触媒などが社外品に交換されている場合、純正部品が残っていないと車検のたびに苦労します。車検対応の社外マフラーでも経年劣化で音量が基準を超えることがあり、そのとき純正マフラーの中古はほぼ見つかりません。

下回りの錆も必ず確認してください。リフトアップしてもらい、フレーム、マフラー、足回りの状態を目視します。外観がきれいでも腹下がボロボロという個体は実際にあります。レストア済みを謳う車両でも、下回りまで手が入っているとは限りません。

幌の状態。生地の破れ、縫い目のほつれ、リアウインドウ周辺の接着状態。張り替え済みかどうかは大きな判断材料になります。

SMT車の場合は試乗でのシフト動作確認が必須です。ニュートラルから1速への入り、変速時の引っかかり、警告灯の点灯がないかを注意深く見てください。冬場に警告灯が点きやすいという報告もあり、季節を問わず試乗することをおすすめします。

そしてステアリングのフィーリング。ハンドルを切ったときに重さが一定かどうか、途中で引っかかるような感触がないか。ジョイント部分の固着は試乗でしか見つけられません。

結局、MR-Sの中古は買いなのか

結論から言います。後期型の6速MT車であれば、弱点を理解したうえでかなり買いです。

1トンを切るミッドシップオープンという成り立ちは、今の国産車にはまったく存在しません。レギュラーガソリンで走り、維持費も常識的。140馬力という数字は地味に見えますが、この車重で味わうと十分以上に楽しい。トヨタ車らしい基本部分の信頼性も、趣味車としての安心感を支えています。

ただし、前期型は1ZZ-FEのオイル消費リスクが無視できません。SMT車はミッション系統の突然死という、スポーツカーとして致命的な弱点を抱えています。この2つを避けるだけで、MR-Sの中古選びのリスクは劇的に下がります。

補修部品の入手難は今後さらに深刻になるでしょう。ぶつけたら高くつく、という現実は常に頭に置いておく必要があります。それでも、この車でしか味わえないドライビングの質感がある。パワーに頼らず、車との対話を楽しめる人にとって、MR-Sは今でも十分に価値のある選択肢です。

手を出してよい人は、後期MTの程度のよい個体を見つけられて、多少の手間やトラブルを楽しめる人。やめた方がよい人は、SMTしか選べない状況でトラブル対応に不安がある人、あるいは日常の足として完璧な信頼性を求める人です。

MR-Sは、トヨタがもう二度と作らないであろうタイプの車です。

程度のよい個体が市場に残っている今のうちに、触れておく価値はあります。

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