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ポルシェ「フル電動911は永遠に作らない」明言、空冷から続く内燃の系譜を守る宣言

ポルシェ「フル電動911は永遠に作らない」明言、空冷から続く内燃の系譜を守る宣言

Source: motor1.com(報道用画像)

ポルシェが、自社で最も重要なクルマについて極めて強い言葉を使いました。「完全電動の911は永遠に存在しない」。CEOのミヒャエル・ライタース氏が今週の年次株主総会で明言したものです。海外メディアが報じたこの発言は、まだ日本語ではほとんど伝わっていません。

自動車業界、いや経営全般を見渡しても、トップが「絶対にやらない」と言い切る場面はそうそうありません。それをポルシェは911に対してやってのけた。ここに、この発言の重さがあります。

タイカン・マカンとは一線を画す「911だけの特別扱い」

ポイントは、ポルシェがEVそのものを否定しているわけではない、という点です。むしろ逆で、同社はEVへの投資を続けると改めて表明しています。マカンとカイエンはすでに内燃モデルと並んで電動版を持ち、復活する718ボクスター/ケイマンもガソリンとEVの両輪で出てくる予定です。

つまり、ポルシェのラインナップでEVの相棒を持たない唯一の存在が911になる、ということです。SUVもスポーツカーも電動化の波に乗せる中で、911だけは別格として囲い込む。これは単なる「当面はやらない」ではなく、系譜の防衛宣言と読むべきでしょう。

ハイブリッドは「つなぎ」ではなく「生命の霊薬」

ライタース氏の言葉づかいが面白いところです。彼はハイブリッドを「橋渡し的な技術(bridging technology)とは見ていない」と述べ、911専用に開発されたパフォーマンスハイブリッドを「未来に向けた根幹をなす要素、いわば生命の霊薬(elixir of life)」と表現しました。

ここが重要です。多くのメーカーにとってハイブリッドはEVへ移る前の過渡的な手段ですが、ポルシェは911に関してそう位置づけていない。厳しくなる排出ガス規制の中で911の内燃を生かし続けるための、恒久的な仕組みとしてハイブリッドを据えている。だからこそ「永遠にフル電動はない」という言葉が成立するわけです。

空冷→水冷→T-Hybrid、911エンジン史の最新章として

この宣言を、911のエンジンが歩んできた道の上に置いてみると意味がよく見えてきます。リアに積まれた水平対向エンジンは、長らく空冷で貫かれ、やがて水冷へと大きく舵を切りました。そのたびに「これで911らしさは終わるのか」という議論が起きてきたのも事実です。

そして現行の992世代では、ついにハイブリッドが組み込まれました。空冷から水冷への移行が「冷却方式の転換」だったとすれば、今回のT-Hybrid的なアプローチは「内燃を生き延びさせるための電動化」です。電気の力を借りながら、あくまで主役はエンジンのまま。今回のCEO発言は、この流れを「ここで止める、ここから先へは行かない」と公式に線引きしたものと言えます。

要するに、911の系譜にとってハイブリッドは「内燃を捨てる第一歩」ではなく「内燃を守るための新しい器」なのです。ポルシェはその点を、かなり意図的に強調しています。

拡大と縮小が同時に進む「Strategy 2035」の中で

この方針は、10月7日のキャピタル・マーケッツ・デーで全容が示される新戦略「Strategy 2035」の一部です。ポルシェは内燃機関・ハイブリッド・EVの3種のパワートレインに投資を続けるとしており、911はそのうち内燃を象徴する旗印として残されます。合成燃料(synthetic fuels)の実験を続けてきたのも、エンジンを生かし続けるための布石でした。

一方でラインナップ全体は、拡大と縮小が同時進行しています。カイエンの上に位置する3列シートの大型SUVは、当初EV専用とされていたものが方針転換し、まずガソリン版から出る見込み。新型ハイパーカーの検討も伝えられています。その反面、ライタース氏は「モデルバリエーションを減らす」とも明言しており、複雑になりすぎたポートフォリオを整理する構えです。すでに米国向けタイカンのワゴン系(スポーツツーリスモ/クロスツーリスモ)販売終了が決まっています(他市場では生産継続)。

こうして全体を見渡すと、ポルシェの判断は一貫しています。売れ筋のSUVやエントリー帯は柔軟に電動化し、複雑さは削る。その上で、ブランドの背骨である911だけは内燃の聖域として守り抜く。「永遠にフル電動の911はない」という言葉は、勢いで出た強気ではなく、系譜を守るための計算された宣言なのだと思います。もちろん、その約束を本当に守り切れるかどうかは、時間が答えを出すことになりますが。

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小鍛治康人(やすと)

この記事を書いた人

hodzilla51

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