2027年型から、ポールスターは米国で新車を売れなくなる
2026年6月25日、ポールスターが米国市場での新車販売を続けられなくなる、という発表がありました。米商務省・産業安全保障局(BIS)が、現行のコネクテッド・ビークル・ルール(Connected Vehicle Rule)に基づく認可をポールスターに与えなかったためです。対象は2027年型(モデルイヤー2027)以降。すでに在庫として存在するポールスター3とポールスター4は引き続き販売し、サービスネットワークも維持される、とされています。
このルール自体は2025年に告知され、2027年型から適用が始まるもので、中国またはロシアと結びついたコネクテッドカー技術を持つ一部の車両について、輸入と販売を制限する内容です。なぜ規制対象になったのか。理由はシンプルで、ポールスターが中国の自動車メーカー、ジーリー(吉利)の傘下にあるからです。
同じジーリー傘下なのに、ボルボは2025年5月に認可されていた
ここがこの一件の核心です。ポールスターはボルボとジーリー・ホールディング・グループの傘下にあります。そしてそのボルボは、2025年5月末の時点で輸入・販売の認可をすでに得ているのです。つまり同じ中国系親会社を持つ姉妹ブランドのうち、ボルボは通り、ポールスターは弾かれました。
なぜこの線引きになったのか、明確な説明はありません。ボルボの広報は米メディアThe Driveに対し「ポールスターの認可プロセスについて我々は知見を持っていない」とコメントしています。ポールスター側も「米当局からこの情報を受け取ったばかりで、ボルボ・カーズと選択肢を検討する必要がある。我々はアセットライトなビジネスモデルの柔軟性という強みを持っている」と述べるにとどまり、明らかに不意打ちを食らった様子がうかがえます。
同じ資本系譜、同じ規制、違う結論。要するに、技術の素性でも投資額でもなく、ブランド単位で「誰が商売を続けられるか」を当局が個別に選り分けている、という状態です。
皮肉なのは、ポールスターが“米国生産”へ動いていたこと
見逃せないのが、ポールスターがすでに米国寄りに舵を切っていた点です。ポールスター3のグローバル生産は、トランプ政権の関税を避けるために中国・成都から、ボルボのサウスカロライナ州リッジビル工場へ移されていました。しかもこのポールスター3は、プラットフォームを共有する兄弟車ボルボEX90と同じ組み立てラインから出てきます。
同じ工場、同じプラットフォーム、隣り合うライン。それでも片方は残り、片方は退場です。米国で組まれている車であっても認可が下りなかったわけで、ポールスター3の今後の生産そのものが宙に浮きました。ポールスターは2026年2月に米国向けの新型を投入する「再起動プラン」を発表したばかりで、その矢先の決定でした。
ポールスターによれば、2026年第1四半期の小売販売の94%は米国外。数字の上では米国依存は小さいとも言えますが、ブランドが米国でひとつ消えるという事実は重いものです。スタンドアロンのブランドになってまだ10年に満たないことを思えば、なおさらです。
これは“ジーリーの線引き”であると同時に、米国の選別の話
角度を変えると、これはジーリーという中国系巨大資本がボルボ、ポールスターを抱えてきた系譜の延長線上で起きた話です。ボルボは長く欧州ブランドとして米国に根付き、サウスカロライナの工場へ追加投資(2030年までにボルボ車2モデルを追加生産)を約束済み。一方、ポールスターはそのジーリー連合の中で生まれたEV専業の新興ブランドで、米国での歴史も浅い。結果として、同じ中国系でも“通る側”と“弾かれる側”に分かれました。
そして今回のルールは、ポールスターだけの問題では終わりません。中国製造のリンカーン・ノーティラスについてフォードが認可を求めている、という報道もあります。BYDは欧州で2030年までに16%のシェアを狙うと公言しながら、米国へはカナダ・メキシコ経由で接近を試み、当局に阻まれ続けています。さらにフォードのCEOジム・ファーリーは中国を視察したのち、中国勢の競争力を「存亡に関わる脅威(existential threat)」と表現しました。
米国に投資しているかどうか、車が競争力を持つかどうかとは別の次元で、政府が「誰を市場に残すか」を選別し始めている──ポールスターの一件は、その分かりやすい一例です。中国系の系譜を持つブランドにとって、ジーリーという同じ親を持っていても安全ではない、という前例ができました。同じ屋根の下のボルボが免れたからこそ、その線の引かれ方の不透明さが際立ちます。

この記事を書いた人
hodzilla51
クルマの系譜を追っていたら、いつの間にかサイトになっていました
