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マセラティ、次期スーパーカーにMTとV6を「持たざるを得ない」逆張りの真意

マセラティ、次期スーパーカーにMTとV6を「持たざるを得ない」逆張りの真意

Source: autocar.co.uk(報道用画像)

「マニュアルを持たざるを得ない」——逆張りの一手

パフォーマンスカーの世界が、ドライバーの関与をソフトウェアアップデートで置き換えようと突き進むなか、マセラティが逆方向の構想を口にした。次期の限定生産フラッグシップ・スーパーカーに、マニュアルトランスミッションと内燃機関を組み合わせる、という案である。

英Autocarに対し、ビスポーク部門ボッテガフオーリセリエ(Bottegafuoriserie)を率いるクリスティアーノ・フィオリオ氏はこう語った。「答えはイエスだ。我々はボッテガの製品において、マニュアルギアボックスも提供ラインnaップに持たざるを得ないと考えている」。同氏によれば、ビスポーク部門の顧客の約50%が、ガソリンエンジンとマニュアルを明確に求めているという。彼はその層を「レトロを求める人々(retro-seekers)」と表現した。エンジニアリング責任者のダヴィデ・ダネシン氏も、マニュアルを「ひとつの機会だ」と述べたと伝えられている。

ボーラ以来、MC12以来——二重の系譜に立つ車

この計画が実現すれば、車そのものが二つの系譜の交点に立つことになる。ひとつは「マニュアルのマセラティ」という時間軸だ。Carscoopsが指摘するように、もし市販に至れば1970年代のボーラ以来となる、ブランド初のマニュアル・スーパーカーになる。半世紀ぶりにクラッチペダルがマセラティのスーパーカーに戻ってくる、という文脈である。

もうひとつは「最も過激な内燃機関モデル」という軸だ。マセラティ幹部は、この少量生産フラッグシップがレンジの最高峰に位置づけられ、2004年のMC12以来、最もエクストリームな内燃機関搭載車になりうると示唆している。ボーラ(操作の系譜)とMC12(過激さの系譜)、その両方を一台で受け継ぐ構想なのだ。

主役はネットゥーノV6——「傑作」にペダルを足す意味

その主役は、ほぼ確実にマセラティのネットゥーノ(Nettuno)V6になる。3.0リッターのツインターボで、電動アシストなしでも最高621hp(630PS)を発生し、現在はMCプーラ(MCPura)(MC20を改名したもの)、グランツーリスモ、そしてグレカーレに搭載されている。

マセラティのCEOサント・フィチリ氏は、グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードでこのエンジンを「傑作だ」と評した。フィチリ氏とアントニオ・フィロサ氏ら経営陣は、ネットゥーノをブランドのアイデンティティの中核と繰り返し位置づけており、今後数年でマイルドハイブリッドおよびフルハイブリッド版へと発展させる(ただしプラグインは作らない)方針だとMotor1に語っている。

ここに角度がある。ネットゥーノは元々、ドライバーの介在を最小化する高度な現代エンジンだ。そこへあえてクラッチペダルという「古い操作系」を組み合わせることは、最新のパワーユニットを最も人間的な作法で味わわせるという、意図的な接続にほかならない。電動化へ向かうV6の進化線の傍らに、あえて自動変速を捨てた一台を置く——それが「持たざるを得ない」という言葉の重みである。

アルファ ロメオとの共作という伝統

計画はマセラティ単独の話にとどまらない。報道によれば、この新型最上級モデルは将来のアルファ ロメオのスペシャルモデルと開発の一部を共有する可能性がある。これは両ブランドの長い協業の伝統を踏襲するものだ。

フィチリ氏はマセラティとアルファ ロメオ両社のCEOを兼ねており、過去の共作を引き合いに出す。アルファ ロメオ8Cコンペティツィオーネは先代グランツーリスモをベースにモデナのマセラティ工場で生産され、同じ工場では後に4Cも作られた。さらに近年では、アルファ ロメオ33ストラダーレが、MC20(現MCプーラ)と基本モノコックおよび3.0リッターツインターボV6を共有している。「我々はモデナで4Cと8Cを作った。ならば、なぜやらない?」とフィチリ氏は語る。33ストラダーレのような「 few-off(少数生産)」のマセラティは、過去を見れば容易に想像できる、というわけだ。

販売は苦戦、それでも語られることの価値

もっとも、ひと握りの高額MTスーパーカーがマセラティの経営を一変させるわけではない。ブランドの販売は弱含みで、批評家の評価は高いにもかかわらず、MC20の登場すらイメージ向上には十分につながらなかったとCarscoopsは指摘する。それでも、こうした一台は「人々が再びマセラティを語る」きっかけにはなる。

背景には親会社ステランティスを巡る不確実性もある。ステランティスは技術提携に関して2社と協議中で、うち1社は中国のBYDだと噂される。一方でマセラティCEOアントニオ・フィロサ氏は今週も「マセラティは売り物ではない」と明言した。フィチリ氏は「電子アーキテクチャや特定部品の供給において、市場で卓越したものを探し、求め、見つけなければならない」と述べ、JLRは提携相手ではないと否定している。

電動化と自動変速化が不可逆に見える時代に、半世紀ぶりのマニュアル・スーパーカーを「持たざるを得ない」と語ること。それは技術的な必然ではなく、ブランドが何を自らのDNAと定めるかという選択だ。ボーラからMC12、そしてネットゥーノへ——その縦串の先に、あえてクラッチペダルを差し戻す一台が現れるかどうか。次の一手が注目される。

小鍛治康人(やすと)

この記事を書いた人

hodzilla51

クルマの系譜を追っていたら、いつの間にかサイトになっていました