「中止」と「承認」が同じ日に起きた
レクサスが2023年末に公開した次世代EVコンセプト「LF-ZC」が、量産化されないまま消えました。車高をやや高めにとったセダンで、新型電動プラットフォームを採用し、登場時期は当初「今年」、ライバルにはBMWを見据えていた一台です。ところがそのスケジュールは2027年半ばへとずれ込み、先月ついにプログラムそのものが打ち切られました。コンセプトの段階を一度も越えられなかった、というのが結末です。
ただ、ここで終わらないのがこの話の面白いところです。トヨタの副社長兼CTOである中嶋裕樹氏が日経クロステックに語ったところによれば、レクサスはLF-ZCの開発を中止したのとまったく同じ日に、その後継車を承認していたといいます。つまり「やめる」と「次をやる」が同時に決まっていた。普通に読めば矛盾しているようですが、中身を見るとむしろ筋が通っています。
消えたのは車体、生き残ったのは技術
中嶋氏は「確かに開発は中止した」と認めつつ、その理由を「LF-ZC向けの金型や量産設備を手配するなど、大きな投資が必要なタイミングだった」と説明しています。要するに、量産にゴーサインを出す直前の一番お金がかかる局面で、この車体のまま進むことを止めた、ということです。
一方で、LF-ZCの開発で培われた技術の多くはすでに完成していました。中嶋氏が挙げたのは、車体を前部・中央・後部の3つに分けて締結する「ギガキャスト」のモジュラー構造、先進運転支援(ADAS)向けの新しい電子プラットフォーム、そして小型化・軽量化の成果です。コンセプトが積んでいた角型(プリズマティック)電池セルも量産に到達するとされています。レクサスはこれらの新技術を流用して後継車を仕立てる、と明言しました。
言い換えれば、捨てられたのは「LF-ZCというセダンのボディ」であって、その下で何年もかけて積み上げた中身は丸ごと次に持ち越されるわけです。中止と承認が同日だったのは、開発資産を一日も冷まさずに引き継ぐための、いわばリレーのバトンパスだったと読むのが自然でしょう。
セダンからクロスオーバーへ、という蛇行
では後継車はどんな形になるのか。現時点で公式な姿は明かされていませんが、見立てとしては電動クロスオーバーかSUVが有力です。理屈は単純で、もう一台セダンを出すよりクロスオーバーの方が数を売れるからです。市場ではBMWの新型iX3やメルセデス・ベンツのGLA EQが出たばかりで、レクサスがこのあたりを正面のライバルに据える可能性も十分にあります。
ここで一歩引いて系譜として眺めると、レクサスのEVフラッグシップ構想はずっと「揺れて」きました。野心的なコンセプトを掲げては、量産化の段で時期が後ろにずれ、形が変わり、最終的に当初の姿とは別物になる。LF-ZCもまた、高い注目を集めたセダンとして登場しながら、量産では姿を消し、技術だけがクロスオーバーへと姿を変えて引き継がれようとしています。これはレクサス単体の判断というより、トヨタの次世代BEVプラットフォーム計画そのものが、目標を掲げ直しながら蛇行してきた流れの一部として見るべきでしょう。
「消えたコンセプト」をどう評価するか
コンセプトのまま終わった車を失敗と切り捨てるのは簡単です。ただ今回のケースは、ギガキャストやADAS用電子基盤、電池といった核心部分が完成して次に渡る以上、開発そのものが無駄になったわけではありません。むしろレクサスは「どのボディに載せるか」という最後の一手を、市場が求める形へ差し替える自由を確保したとも言えます。
セダンとして見たかった層には残念な決定ですが、技術の系譜という縦串で読めば、LF-ZCは消えたのではなく、名前と形を変えて生き延びようとしている段階です。後継車がどんな姿で出てくるのか──そして今度こそ量産にたどり着けるのか。レクサスEVフラッグシップ構想の次の一章は、その一点にかかっています。
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hodzilla51
クルマの系譜を追っていたら、いつの間にかサイトになっていました
