「Landmark」の名が持つ意味
ランドローバーがディスカバリーに新しい高級仕様「Landmark(ランドマーク)」を追加しました。ニュースとしては一台の特別仕様追加に過ぎません。ただ、この「Landmark」という名前を知っている人ほど、背筋が少し伸びるはずです。
というのも、この名前は歴代ディスカバリーが生産終了を迎える最後の数カ月に使われてきた「見送り仕様(run-out edition)」の名だからです。ディスカバリー2、3、4がそれぞれ生涯の終わりに「Landmark」を名乗りました。つまり今回の登場は、9年目に入った5代目(L462)の終わりがいよいよ近いことを示唆しているわけです。
76,000ポンドの記念仕様、その中身
新しいLandmarkの価格は76,000ポンド。エントリーの「S」(70,000ポンド)と最上級の「Tempest」(84,000ポンド)のちょうど中間に位置します。専用色として与えられたのは「Tasman Blue(タスマン・ブルー)」。これは初代ディスカバリー(Disco 1)の象徴的なカラー「Clearwater blue」へのオマージュだと明かされています。終わりの一台が、始まりの色を振り返る──記念仕様としては王道の演出です。
装備面ではスライド式パノラミックサンルーフ、そしてセンターコンソールの冷蔵庫を標準化。内外に専用のスタイリングを加えて仲間内との差をつけています。パワートレインは全車がD350の直列6気筒ディーゼルのみ。ディスカバリーはすでにガソリンとPHEVをラインナップから落としており、この点も終幕モードに入っていることを物語ります。
ちなみに5代目は2019〜2020年にも一度「Landmark」仕様を出しています。こちらはディスカバリー30周年を祝う記念でした。同じ車が、記念と見送りの両方で同じ名を使うことになるわけです。
JLR最古参という立場
2017年2月に英国で発売されたディスカバリー5は、いまやJLRのラインナップで最も古いモデルであり、英国で現在販売されている車の中でも最長寿の部類に入ります。オートカーはこのLandmarkが現行型の白鳥の歌(swansong)なのかをJLRに確認しようとしましたが、広報担当者は将来の製品計画についてコメントを控えました。
否定しないところに、むしろ答えが滲んでいる、と読むのが自然でしょう。
ディフェンダーに食われたディスカバリー
ここからが系譜の視点で面白いところです。ディスカバリーは1989年の初代以来、ランドローバーの「ファミリー4×4」を一手に引き受けてきた存在でした。ラグジュアリーのレンジローバー、質実剛健のディフェンダー、その間を埋める実用の要がディスカバリーだったわけです。
ところが、その構図を崩したのが復活したディフェンダーでした。ディフェンダーとディスカバリーのブランドを率いるマーク・キャメロン氏はオートカーにこう語っています。「製品の観点で見ると、ディフェンダーが登場してディスカバリーの真上にどっかり座り、その商売の多くを共食い(cannibalise)してしまった」。
要するに、圧倒的に人気のディフェンダーが、ディスカバリーの居場所を奪ってしまったのです。JLRの現在の優先順位は、レンジローバー・エレクトリック、ディフェンダー・スポーツ、そしてヴェラールの後継といった別のプロジェクトに向いています。ディフェンダーとレンジローバーへの偏重は、ここでも鮮明です。
ネームプレートは残るのか
ではディスカバリーの名は消えるのか。キャメロン氏は「ディスカバリーが何を意味するのかを作り直す(recreating what Discovery stands for)」作業を進めていると述べており、大型ファミリーハウラーをディフェンダーと明確に差別化するために「劇的に再ポジショニングする」構想もほのめかされています。
ネームプレートの未来はまだ確定していません。ただ確かなのは、1989年から続いてきた「ディスカバリー像」が一度リセットされようとしていること。今回のLandmarkは、その節目を告げる標識(landmark)として、名前どおりの役割を果たしていると言えます。始まりの青を身にまとった一台が、系譜の岐路に静かに立っています。

この記事を書いた人
hodzilla51
クルマの系譜を追っていたら、いつの間にかサイトになっていました
