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ゴードン・マレー T.50s「ニキ・ラウダ」初号機、グッドウッドで初走行へ

ゴードン・マレー T.50s「ニキ・ラウダ」初号機、グッドウッドで初走行へ

Source: motor1.com(報道用画像)

初号機がついに「走る」状態に

ゴードン・マレー・オートモーティブが、サーキット専用ハイパーカー「T.50s ニキ・ラウダ」の最初の顧客車(シャシー1)を公開しました。お披露目の舞台は今年のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード。しかも展示で終わらず、あの有名なヒルクライムを実際に駆け上がるとされています。静止画の発表ではなく「走る姿で見せる」というのが、いかにもレース畑出身のマレーらしいところです。

初号機はホワイトのボディに、南アフリカ国旗をモチーフにしたシンプルなリバリーをまとっています。ボンネットのストライプと、フィンに入るアクセントカラーがそれ。これはマレーがF1で初めて勝利を挙げた1974年の南アフリカGPへのオマージュです。車名の「ニキ・ラウダ」と合わせ、この車がスペックの塊である以前に、ひとりのエンジニアの記憶を形にしたものだと分かります。

マクラーレンF1から続く「中央席」という背骨

T.50s ニキ・ラウダを系譜として読むなら、出発点はやはりマクラーレンF1です。マレーが設計したF1は、ドライバーを車体中央に置く独特のレイアウトで知られました。その思想は公道版T.50に受け継がれ、今回のT.50sにも明確に残っています。ソースでも「ドライバーは中央に座る」と明記されており、これは単なる懐古ではなく、マレーが一貫して追い続けてきたパッケージングの結論なのです。

つまりマクラーレンF1→T.50→T.50sという流れは、エンジン形式やパワーの話である前に、「人をどこに座らせ、空気をどう使うか」という一本の背骨で貫かれています。T.50sはその最も先鋭化した枝、というわけです。

761馬力のコスワースV12と、アクティブ空力

パワートレインは3.9リッターのコスワース製V12。最高出力は11,500rpmで761馬力に達します。1万回転を超えてなお回り切る自然吸気V12という設計自体が、いまや絶滅危惧種です。トランスミッションは6速で、パドルシフトを備えます。公道版T.50からの「進化版」と位置づけられている点も押さえておきたいところです。

そして核心が空力です。T.50sは可変(アクティブ)空力を持ち、最大で2,645ポンド(約1.2トン相当)ものダウンフォースを発生させるとされています。マレーといえば、グランドエフェクトを大胆に追求してきた人物。中央席と並んで、空気を味方につける発想は彼のキャリアを縦に貫くテーマであり、T.50sはその思想をサーキット専用という制約のない環境で解き放った存在だと言えます。

25台・すべて完売、価格は300万ドルから

生産はわずか25台限定で、すでに全車が買い手に渡っています。価格は300万ドルから。この希少性と価格を見れば、T.50sが単なる派生グレードではなく、ブランドの頂点を担う特別な一台として企画されたことがよく分かります。

グッドウッドに並ぶ、もう3台の意味

マレーは今回のグッドウッドに、T.50sを含めて計4台を持ち込みます。残る3台は、欧州初公開となるS1 LMのデザインモデル、そして24台の生産が予定されるル・マンGTRのプロトタイプ「XP1」、さらにT.33スパイダーの検証用プロトタイプ「VP12」です。XP1もヒルクライムを走るとされています。

執行会長を務めるゴードン・マレーによれば、T.50sはすでに製造段階に入っており、T.33とT.33スパイダーも開発が「かなり進んでいる」とのこと。さらに同社は、自らの設計・エンジニアリング哲学の限界を探るための、より「専門特化したレンジ」も用意しているといいます。設立からわずか6年でこれだけのラインナップを立て続けに展開していること自体が、ひとつの驚きです。

速報の先にあるもの

正直なところ、761馬力やダウンフォースの数字だけを並べてもT.50sの本質は伝わりません。この車の面白さは、マクラーレンF1で確立した中央席と、長年追い続けた空力哲学が、価格やナンバー取得の制約を外したサーキット専用車という器でどこまで純化されたか、という点にあります。グッドウッドのヒルを駆け上がる初号機は、そのマレー流の系譜が今もなお現役で進化していることの、生きた証明になるはずです。

小鍛治康人(やすと)

この記事を書いた人

hodzilla51

クルマの系譜を追っていたら、いつの間にかサイトになっていました