電動アルパインA110、グッドウッドで初走行へ──軽量哲学はEVで生き残れるか
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参考画像: アルピーヌ A110(現行モデル) / Alexander Migl / CC BY-SA 4.0 / via Wikimedia Commons
グッドウッドの「アルパイン・モーメント」に現れるプロトタイプ
次世代アルパインA110が、英グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード(FoS)でプロトタイプとして初走行デビューを果たします。Autocarによれば、電動スポーツカーとなる新型A110のテストミュールが「アルパイン・モーメント」と銘打った展示の一部として、退役する現行ガソリンモデルの複数のバリエーションと並べて披露されるといいます。
テスト車がどんなカモフラージュをまとうかは、まだ分かりません。アルパインは完成形のデザインについてほのめかす程度しか明かしておらず、量産仕様のボディは使われない公算が大きいようです。むしろ現行ガソリンA110に近い見た目になる可能性がある、とされています。注目すべきは「初走行」が量産発表でも完成披露でもなく、開発途上の素体である点です。アルパインにとってA110のEV化は、それだけ慎重を要する世代交代なのです。
1962年ベルリネットから続く「軽さ」というアイデンティティ
アルパインを語るうえで外せないのが、軽量へのこだわりです。1962年のベルリネット以来、ジャン・レデレが築いたこのブランドの背骨は、一貫して「軽さ」にありました。現行A110もまた、ポルシェやアウディといったライバルに対して圧倒的な軽さを武器に、パワーではなく身のこなしで勝負するという思想を現代に蘇らせたモデルでした。
その系譜にとって、EV化は最大の試練になります。バッテリーという重量物を抱えるEVは本質的に「重さ」と戦う宿命にあり、アルパインのアイデンティティそのものと正面衝突するからです。だからこそ今回のグッドウッド初走行は、単なる新型披露ではなく、「軽量ブランドがEVで何を守るのか」を問う一里塚として読むべきでしょう。
二分割バッテリーという回答
新型A110は、新開発の「アルパイン・パフォーマンス・プラットフォーム(APP)」を採用します。このプラットフォームは軽量化を最優先に開発され、アルミ構造と800Vの電気系を備えます。
最も特徴的なのは、高性能EVで一般的な一体型の大容量バッテリーではなく、二つのバッテリーパックを採用する点です。前後アクスル上にそれぞれ配置されることで、重量配分は40:60となります。これは44:56だったガソリンA110よりも、ややリア寄りの配分です。アルパインのCEOフィリップ・クリーフは、この分割パック設計を選んだ理由を、電動A110を現行車と同じだけ低く構えさせるためだと説明しています。同時に、340マイル超の航続距離をもたらすといいます。
さらにクリーフは、ニュルブルクリンク北コースを3周してもバッテリーがディレーティング(発熱による性能低下)を起こさないよう設計されていると述べています。軽量ブランドが、重さの代償をパッケージングと熱マネジメントで乗り越えようとしている構図です。
「内燃機関への転用余地」が示すもの
興味深いのは、リアバッテリーが現行A110のエンジン搭載位置あたりに置かれていることです。クリーフはこれを、必要とあらばEVを内燃機関仕様に転換できる「チャンス」だと表現しました。ただし彼は、その互換性がEVとしての完成度を犠牲にして盛り込まれたものではないと釘を刺します。「もし答えがそれ(EVを悪くすること)だったなら、絶対にやらなかった」と語っています。
そして最大の論点が車重です。クリーフはAutocarに対し、新型A110の車重は現行の内燃機関ライバル並み、つまり約1500kgになるとの見通しを示しました。これは現行A110より大幅に重い数字です。軽さを身上としてきたブランドが、ライバルの「今の重さ」に追いつくことを及第点とせざるを得ない──ここに、EV時代のアルパインが直面する現実が凝縮されています。
系譜の継承か、再定義か
ベルリネット以来60年あまり、アルパインは「軽いことそのもの」を価値としてきました。ですが電動A110が目指すのは、絶対的な軽さの再現ではなく、低い重心、後輪寄りの配分、サーキットで垂れない持続性といった「走りの質」の継承です。数字としての軽量は失われても、その軽量が生み出していた身のこなしを別の手段で再現する──それが二分割バッテリーという回答の本質でしょう。
グッドウッドの丘を駆け上がるカモフラージュ姿のプロトタイプは、まだ多くを語りません。しかしその一走は、アルパインの軽量哲学がEVという制約のなかで形を変えながら生き残れるのかを占う、最初の証言になります。

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hodzilla51
クルマの系譜を追っていたら、いつの間にかサイトになっていました