シボレーが2027年型コルベット・スティングレイの価格を公開しました。クーペの1LTで7万3495ドル、パワーフォールディング機構付きのコンバーチブルで8万495ドルからというプライスです。そして同時に発表された数字のほうが、はるかに大きな意味を持っています。GMが計測で裏付けた最高速が、初めて200mph(約322km/h)を突破したというのです。
つまり、コルベットのラインナップで最も安いモデルが、いま世界で「最も安く200mphに届くクルマ」になったということ。これはコルベットというブランドの根っこにある哲学を考えると、とても象徴的な出来事です。
40馬力増の正体は新型6.7リッターLS6
2027年型最大の変更は、コックピット背後にあります。従来の6.2リッターV8「LT2」が、新開発の6.7リッターV8「LS6」に置き換わりました。出力は490馬力(Z51パッケージで495馬力)・465lb-ft(同470lb-ft)から、535馬力・520lb-ftへと向上。LT2比でちょうど40馬力のアップです。
注目すべきは520lb-ftというトルク値で、これは自然吸気V8として量産車最高記録だとされています。過給に頼らずここまで来たという事実が、エンジン屋としての矜持を感じさせます。スモールブロック担当アシスタントチーフエンジニアのMike Kociba氏は「すべてはパワーのおかげだ。この記録はLS6の実力を示している」と語っています。
このLS6は、復活した「グランスポーツ」、そして新設定の「グランスポーツX」にも搭載されます。後者はフロントにeアクスルを追加して合計721馬力に達するというから、エンジン単体の素性の良さがうかがえます。
194mphから200mphへ、6mphの壁を超えた
最高速は従来の194mphから200mph超へ、6mph上乗せされました。0-60mph(約97km/h)は2.8秒で、従来のZ51装着車から0.1秒短縮。ゼロヨンは124mphのトラップスピードで11秒台に入り、こちらも約0.2秒・約2mphの改善です。地味ですが、確実に速くなっています。
ただし、200mphを実現できたのはパワーだけが理由ではありません。スティングレイのナローボディが効いています。ワイドボディのZ06やZR1に比べて空気抵抗が小さく、トップエンドで伸びるのです。実際、より高性能なはずのZ06は公称195mphで頭打ちになり、200mphに届きません。エアロは直線最高速の天敵だという、わかりやすい逆説がここにあります。なお、リップスポイラーやギア比が変わるZ51パッケージを装着したスティングレイは、最高速ではここまで伸びない見込みとされています。
“2世代で降りてきた”200mphという数字
ここで系譜の話をしましょう。工場出荷のコルベットで初めて200mphを破ったのは、C6世代のZR1でした。当時の最高峰、フラッグシップだけが立てた金字塔です。それがわずか2世代を経て、ラインナップ最廉価のベースモデルにまで降りてきた。これはコルベットの性能インフレを語るうえで、非常に象徴的なマイルストーンです。
かつて200mphといえば、ごく限られた一握りのハイパーカーだけが触れられる神聖な数字でした。いまや到達する車種は増えましたが、それでも特別な響きを失ってはいません。その数字を、ピラミッドの一番下にいるモデルが達成してしまった。ミッドシップ化で一変したC8世代の系譜を振り返ると、この到達点がどれだけ急な上り坂の先にあるかがわかります。
“安く速い”という哲学は、まだ生きているのか
では、コルベットの代名詞だった「安く速い」は健在なのでしょうか。答えは、少し複雑です。C8の登場時、2020年モデルのMSRPは5万9995ドルでした。6万ドルを切る価格でミッドシップを買えるという衝撃が、当時のニュースの主役だったのです。それがいまや7万3495ドル。スタート地点から1万3500ドルの上昇です。
この値上げをどう見るか。The Drive誌は、新車の平均価格がこの7万3500ドルより2万2000ドルも安いことに触れつつ、「今世紀最大のお買い得とは言わないが、それでも良い取引だ」と評しています。Motor1誌も、価格上昇は経済全体の縮図であってシボレーだけの責任ではなく、その間にクルマ自体が大幅に進化していることを理由に「値上げは正当だ」と擁護しています。
たしかに、性能の上がり幅を考えれば値上げには筋が通っています。ただ、注意したいのは哲学の中身がすり替わりつつあることです。「誰でも手が届く速さ」が売りだったコルベットは、C8世代を通じて「同価格帯では考えられない速さ」へと軸足を移しました。安さの絶対値ではなく、価格に対する性能の異常な高さで勝負するクルマになった、ということです。最安モデルがZ06の最高速を上回るという今回の出来事は、その変質を一枚の絵にしたような象徴だと、筆者は受け止めています。
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hodzilla51
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