Vitz GRMN - NCP131GR ヤリスの前日譚

小鍛治康人(やすと)約4分

ヴィッツの話はするか迷いましたが、GRヤリスのDNAを語る上でこのクルマは必須だと思うので書きました。

Vitz GRMNが切り開いたGRの夜明け

カローラスポーツ – NRE210H【「普通」を再定義するために生まれたハッチバック】

TNGAで生まれ変わったカローラのハッチバック版。欧州オーリスの血統を受け継ぎつつ、日本市場に「走れるカローラ」を再提示した一台の背景と意味を読み解きます。

2017年3月、トヨタは国内150台・欧州400台限定のVitz GRMNを発表しました。

1.8 L 直列4気筒にスーパーチャージャーを組み合わせて212 PSを発生し、0-100 km/h加速は6秒台。

エンジンは異例のロータスがチューニングを担当し、17インチBBS鍛造ホイールや専用ブレーキを備えた3ドア専用ボディで、小型ハッチバックの常識を大きく塗り替えました。

GRブランドとGAZOO Racing Companyの誕生

Vitz GRMNの登場と同じ2017年、トヨタはモータースポーツ部門を統合してGAZOO Racing Companyを発足させ、スポーツモデルを「GR」「GR SPORT」「GRMN」の3階層に再編しました。

ここから「レースで鍛え、市販車で還元する」開発思想が本格的に動き出します。

「サーキット直結」の小型ホットハッチ

GRスープラ – A90【17年の沈黙を破った、トヨタが一人では作れなかった直6FR】

17年ぶりに復活したスープラA90。BMWとの共同開発という異例の選択の裏には、トヨタ単独では成立しえなかった直6FRスポーツの現実があった。その開発経緯と存在意義を読み解く。

プロジェクトを率いたエンジニアたちは「排気量を上げずに欧州Bセグを圧倒する」を合言葉に、機械式LSD、専用サスペンション、強化ボディを投入しました。

テストコースとニュルブルクリンクで繰り返した走行評価では、量産Vitzとは別物のシャープなステアリングフィールが追求され、コーナー脱出加速を重視したギア比の6速MTが選ばれています。

台数限定ゆえの「争奪戦」とラリー転戦

日本では商談申込み開始からわずか数日で完売し、抽選倍率は10倍以上と報じられました。

完売後もTOYOTA GAZOO Racingは全日本ラリー選手権へGRMN Vitz Rallyを投入し、開発データを公道で収集。

小さなボディに高出力エンジンと機械式LSDという組み合わせが、タイトな林道でも有効であることを証明しました。

GRヤリスへの「渡り板」

GRヤリス - GXPA16【執念が生んだトヨタの異物】

このクルマ、実はトヨタの多方面からのDNAを受け継いでいて、 まずは直系とも言えるVitz系のコンパクトカーのDNAです。特にVits GRMNはGRヤリスの起源と言っても過言ではありません。 次にWRCホモロゲーション […

Vitz GRMNで得られたパワートレーンや車体剛性強化のノウハウ、そして「限定でも採算を取る少量生産のビジネススキーム」は、後のGRヤリス開発を支える土台になりました。

GAZOO Racing Companyが掲げる「走る→壊す→直す」の耐久テスト哲学もこのモデルで磨かれ、社内に「ホモロゲ級ホットハッチを本気で作れる」という成功体験を残しました。

まとめ

Vitz GRMNは、カタログモデルの外側に“本気のホットハッチ”を用意できることを示し、GRブランド黎明期を象徴する一台となります。

その小型・高出力・限定生産というパッケージは、2020年のGRヤリスへと確かに継承され、トヨタのモータースポーツ起点のクルマづくりを今日まで牽引し続けています。

この一台がGRヤリスへつながっていく背景は、コラムで別に追っています。

豊田章男はなぜ許されたのか——株主127万人のトヨタでGRヤリスが生まれた理由

創業家が議決権を握っていないトヨタ自動車で、なぜGRヤリスとGR Factoryが実現できたのか。株主127万人という資本構成、4610億円の赤字から始まった14年、取締役再任賛成率から、豊田章男が作った「挑戦が許される構造」を読み解きます

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Vitz GRMN - NCP131【GR ヤリスの前日譚】

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