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シビックType R – EK9 【至高のType R】

車種の概要

遂に「Type R」がシビックに降臨 1997年8月22日、ホンダは6代目シビック(EK型)のマイナーチェンジに合わせて初代シビック Type R EK9が追加しました。 NSX-R、インテグラ Type Rで育んだRの […]

  • hodzilla51
  • 6分で系譜を理解
シビックType R – EK9 【至高のType R】

遂に「Type R」がシビックに降臨

1997年8月22日、ホンダは6代目シビック(EK型)のマイナーチェンジに合わせて初代シビック Type R EK9が追加しました。

NSX-R、インテグラ Type Rで育んだRの称号を、さらに身近なハッチバックへ落とし込みます。

白いボディに赤いHマーク、185 psを誇るB16Bと1 t強の軽量シャシー…

発売と同時に「テンロクNA最速」「世界最速FF」とメディアが大騒ぎし、若者はこぞって販売店に列を作りました。

シビック初Type R開発ストーリー

1995年にデビューしたインテグラ Type Rの成功を横目に、シビック開発陣は「走り好きがシビックにも赤バッジを求めている」と確信。

6代目シビックを手掛けた黒田博史LPLらは、マイナーチェンジ枠での追加を上層部に直談判し、年末にゴーサインを獲得します。

コンセプトは「日常も使えるリアルFFレーサーを200万円以下で」。コストと性能の綱渡りを強いられたが、「若いホンダ党が買えなきゃ意味がない」と開発陣は語っています。

テンロクNAの頂点「B16B」

心臓部B16BはB16A系をベースに、ハンドポート研磨・高圧縮ピストン・高リフトカム・各部フリクション低減を施し、185 ps/8,200 rpm・16.3 kgm/7,500 rpmを実現。

リッターあたり115 psは当時の量産NA世界最高水準で、レッドゾーンは8,400 rpm。組み立ては熟練工が手仕上げでクリアランスを合わせ、専用ECUがハイカム切替5,800 rpmを叩き出す。

回せば吠え、伸びはターボ級というキャラクターは、以降のType Rが守り続ける金字塔となります。

「薄くて硬い」理想のボディ

EK9のボディはノーマルEKにスポット溶接打ち増し&シーム溶接を追加し、局部剛性を大幅アップされました。

また、制振材・アンダーコートを剥ぎ、鉄板をより薄い高張力鋼に置換して1,040 kg(標準装備車)を達成しました。

装備もストイックで、手巻きウインドウや簡素な内装、チタンシフトノブ、レカロ・モモ製品を除けば快適装備は最小限。

これに5速クロスMTとヘリカルLSDが噛み合い、軽くて固い箱にハイカムNAというType Rの方程式が完成しました。

サーキットが証明した「伝説」

発売翌年からワンメイクのシビックレースがEK9にスイッチします。

鈴鹿クラブマン(FFチャレンジ)、もてぎロードスターカップ系など、他の1600ccが記録していたレコードは次々塗り替えられ、同じEK9どうしでしか勝負が決まらないという事態となります。

市販車テストでも筑波1分6秒台を記録し、当時の2 Lターボ勢と互角以上に渡り合います。

かの土屋圭市氏も試乗後に「NAテンロクがここまでやれるとは」と絶賛し、ホットハッチのベンチマークを塗り替えたのです。

ストリートを席巻した三つの魅力

ストリートで熱狂を呼んだ三つの魅力を紹介します。

まず超高回転VTECサウンド。5,800 rpmでカムが切り替わる刹那、炸裂するような音が耳に残り、まるで“合法ドラッグ”のような中毒性を生みます。

次に軽快な操作系。薄板ボディとクイックステアのおかげで峠の切り返しはカートさながらに軽く、ドライバーの入力に即座に応えます。

そして、現代ではこのメリットは見る影もありませんが、199万8,000円という衝撃の価格設定でしょう。ライバルのターボ車より安く、しかも速いという事実が当時の若者たちの助けとなりました。

後世に受け継がれたDNA

B16Bが鍛えた高剛性バルブトレインは、FD2型K20Aで8,400 rpmまで続きます。

現行FL5型K20C1はターボ化の事情で7,000 rpmに抑えられるものの、部品強度や軽量バルブまわりの思想自体はこの系譜が土台になっています。

ワンメイクレースで鍛えられた EK9 の実戦ノウハウは EP3 以降のサーキット仕様に色濃く反映され、足まわりやギア比に至るまで走るための標準装備を当たり前のものにしました。

そして、遮音材を削り薄型ガラスを奢った軽量化への執念は、現行 FL5 でアルミ&FRPパネルへと進化しています。

この三つのDNAは世代を超えて脈々と磨かれ、ホンダ Type Rを単なる高性能車ではなく、「走る歓び」を極める存在へと昇華させています。

「操る歓び」の純血種

EK9は「走る・曲がる・止まる」を研ぎ澄ませ、公道とサーキットを地続きにした最初のコンパクトFFレーサーと言えます。

ハイカム突入で景色がワープし、軽いボディが意のままに向きを変える…その快感は後のType Rでもある程度味わえるかしれませんが、EK9は「余計なものが何もない」ぶんだけ生々しい。

最初の赤バッジとなるEK9。令和のこの時代に手に入れられた幸運な人は、ぜひとも回して、操って、VTECで世界が変わる瞬間をぜひ味わってほしい。

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